相続した土地が売れない!相続税が払えない?接道していない土地

■1億円の相続税

Fさんは48 歳でお子さんが2人いる3人家族。10 年前に夫とは離婚して女手一人で子育てをしてきた。しかし、子育てが終わってすぐに父親の相続を迎えた。Fさんの母親も数年前に他界しており、姉妹もいないため相続人はFさん1人である。相続人が1人であるから遺言書はもちろんのこと、相続後の違算分割協議書も不要であることは言うまでもない。
遺産総額は、土地が400 坪で4億円、自宅と3 階建のマンションが5,000 万円である。
預貯金は3,000 万円、債務は1億円。債務とは5年前に建築したアパートローンである。
相続税は1億円である。Fさんは相続税の納税のために、更地として用意していた自宅裏の駐車場100 坪を売却して納税資金に充てようと考えていた。

■接道していない土地

土地のレイアウトは単純だ。東南角地に位置する一団の土地。接道する道路は南側が幅員6mの公道。そして、東側が幅員4.5mの私道。土地は3つの利用区分で分けられている。
東西に長い長方形の土地の西側半分の200坪には3階建てのマンションが建っている。東南角地の東側200 坪は南側が自宅100坪、北側100坪が駐車場である。
この駐車場はすでに全ての車両の駐車場契約を終了していて現在は空地である。いよいよ相続税の申告と納税を2ヶ月後に控えたFさんは、土地の売却を具体的に進めることにした。そんなある日、売却を依頼していた不動産業者から1本の電話がかってきた。
「お客さまのお土地は道路がないので売れませんね……いわゆる死地(しにち)なのです」
愕然したFさんには、電話口から聞こえる不動産業者の声がだんだん遠ざかっていくように感じられた。

■42条1項5号道路には接道していない

不動産業者の具体的な説明はこうだ。駐車場の東側にある道路は私道であり、建築基準法第42条1項5号道路でいわゆる位置指定道路である。現況の幅員は4.5mであるが、認定幅員は4.0mであるため、0.5m部分は道路でなくただの通路であるという。
つまりその0.5m部分は、建築基準法上の道路ではないので認定道路とは0.5m離れている駐車場は接道をしない「無道路地」であるという。この私道は約50年前の昭和38年に作られた道路である。当時の道路の幅員は、4.0mで道路端に0.5mほどののり地(崖地)があったとのこと。昭和38年から昭和50年頃までは、この道路は砂利道でありのり地もあったが、その後、舗装されてのり地も盛り土されて舗装され、現況の幅員は4.5mになっていたのである。

■いわゆる無道路地の解決策とは

相続税1億円の原資としてこの土地の売却を考えていたFさんは、ただ途方に暮れるばかりであった。だれにも相談できずに無道路地で土地が売れない事態に追い込まれたFさんの驚きと落胆は計り知れない。数日後、気を取り直したFさんは知人からの紹介で不動産に強いFPと出会うことができ、ようやく解決の目処がついてきた。
自宅の一部を解体して2部屋なくせば奥の駐車場からの土地を延長して南側の公道に接道することが可能になるのである。ただその2部屋は想い出のいっぱい詰まった父親の書斎と寝室であった。自宅をまるまる残す方法として、駐車場の土地に自宅を曳家工事で移し、自宅のあった土地を売却することも検討したが、自宅の一部解体と壁面修復工事に比べ曳家工事のほうがはるかに費用がかかることが判明した。納税資金の確保という観点からは現実的ではない。
悩んだ末にFさんは、苦渋の選択としてその2部屋の解体を決断した。駐車場は無事に接道する土地に復元できたのである。そうはいってもその土地の形状は一般的には敷地延長(旗竿)の土地である。売却金額も残念ながら当初の値段よりも3割も低い金額になってしまったが相続税は預貯金と合わせて無事に納税することができた。

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