相続対策としての養子縁組・・・税対策?分割対策?

相続対策には様々なものがあります、今まで相続対策というと「相続税対策」を考えるのが当たり前でした。しかし、昨今では遺言の普及等に伴い、争族対策も着目されるようになりました、つまり、「遺産をいかに分けるか」という争いの根本が少しずつですが脚光を浴びつつあります。

そんな中、今年に入って間も無く、皆さんもご存知ことかと思いますが、「相続対策としての養子縁組」に関する最高裁の判決が下されました。

この裁判に関して簡単にお話ししますと、被相続人が生前に、相続税の節税対策として税理士に勧められ、長男の息子(被相続人の孫)と養子縁組をしたところ、他の相続人(長女等)から、「養子縁組はあくまでも節税対策として税理士に勧められて行ったものだから、無効である」と訴えられ、裁判で争われることになったものです。

争点は、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合は、民法802条1項の『当事者間に縁組をする意思がないとき』に該当するか、否か」ということでした。

民法802条1項には、「人違いその他の理由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、養子縁組は無効である」旨、規定されています。因みに、「縁組をする意思」とは、社会通念上親子関係と認められる関係を成立させる意思である、とされています。

結果、最高裁で「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1項にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」と判示されました。

これを受けて、「相続税対策として養子縁組は、使える、有効だ、最高裁の判決が出たから大丈夫だ」などと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか、また、そのように言って勧めてくる専門家もいるのではないでしょうか。

そこで、冷静に考えてください。確かに最高裁では上記のように判決が出ました。

しかし、これは『争い』の結果なのです。

最高裁まで争わなくてはならない『争族』になってしまったのです。

このことを忘れないで頂きたいと思います。

元々の発端はなんでしょう。そうです、税理士が相続税対策のために養子縁組を勧めたことです。

そして、この税理士がこの養子縁組にどのようなリスクがあるか考えなかったことです。だから、他の相続人から「ノー」というリアクションがあったのです。この争いは「節税ありき」の相続税対策の提案が生んだ悲劇だったと思います。

では、この場合どうするべきだったのでしょうか。「養子縁組をして節税対策をする」というのは確かに有効な手段ですから、否定するものではありません。ここで重要なのは「考える順番」と「リスクの検証」です。

詳細はまた別の機会にお話ししたいと思いますが、この2点が抜けてしまうと、何のための相続対策なのか分からなくなってしまうこともあり、遺産分割対策のためにと思って行った対策が、検証してみるとその効果はほとんどなく節税対策では、、、と思われる内容になっていたということもあります。

相続対策を行うときには、「考える順番」と「リスクの検証」を忘れないでください。

いきなり「相続税の節税対策をしましょう」、というお誘いには安易には乗らないことです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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