シニア世代が考える第二の人生と相続問題

 シニア世代と一口にいっても何歳ぐらいを指すのか、という疑問を抱く方も少なくないでしょう。

一般的には60歳以上がシニアと言われることが多いようですが、筆者の好きなゴルフの世界では50歳以上がシニアとなるようです。シニア世代をどの年齢層と捉えるかは皆さんの考えにお任せします。

 いわゆるシニア世代と呼ばれる年齢層では仕事面でもそれなりの成果を収め、企業では役職に就くなどの結果を残している人も多く、子供のいる方は子供も立派に成長し子供自身の独立した生活をしている方も多いと思います。

 そのような年齢に達すると第二の人生を考える方も中にいることでしょう。いっときシニア婚なるものが話題になっていたこともありました。

第二の人生という概念にはシニア婚のみならず、地方移住など様々なものが考えられますが、今コラムではシニア婚にフォーカスして見たいと思います。

今までずっと独り身であるからそろそろ老後を一緒に過ごすパートナーを探そうとか、配偶者を亡くしてからかなりの年月が経つとか、人それぞれ状況や考え方は違うと思いますが、シニアコンに良いことばかり思い浮かべていると後々思いもよらないトラブルに見舞われることもあります。

シニア婚を取り上げている記事などにもやはり問題点が指摘されていて、その問題点とは、まさしく相続問題です。

現在の法律では婚姻後の配偶者はもう一方の配偶者の財産に対して2分の1の法定相続分を有することは言うまでも無いことだと思います。

この場合、子供がいなく完全に1人である独身者の人がシニア婚をし、新たに配偶者ができるというのであればあまり問題にはならないのかもしれませんが、子供がいる場合にはそれなりに問題が発生してくる可能性はあります。

しかし、それも当事者の考え方ひとつで変わってくるのかもしれません。

例えば、配偶者を亡くし、子供がいるAさんが、子供が結婚して家庭を持つようになったのを機に、第二の人生としてシニア婚を考え実行しようとした場合、予め子供の了承を得て、籍を入れる前に新たな配偶者と子供の交流を図り、お互いに納得の上で入籍するのと、子供には内緒で入籍し事後報告のみ行い、交流も絶ってしまうような場合とでは、問題が発生する可能性も大きさも全く違ったものになってしまうでしょう。

このような場合に問題となりうるのは、子供の心(感情)です。

子供の感情の中には、すでに他界した自分達の親の存在もあるわけですから、今現在この財産があるのは両親が築き上げてきたからであり、晩年に現れた人にその2分の1を持っていかれてしまうのは何ともやりきれない思いが込み上げてくるかもしれません。

自分の第二の人生のために新たなパートナーを探すことは悪いことではありません、それによって生活に活気が出てくることもあるでしょう、ただ、自分が歩んできた人生がそれなりにあるわけですから、家族や財産のことなど真剣に考えて、自分勝手な振る舞いにならないように注意しなければならないと思います。

前述したとおり現在の法律では配偶者は法定相続分2分の1です。

1日でも権利が発生します。これを悪用する人も少なからずいることでしょう。

筆者の造語でいえば、「ほくそ笑む相続人」です。

第二の人生を共に歩んだ配偶者の相続が開始した場合には、その配偶者に法定相続人がいる場合には、その法定相続人に対する配慮も必要になるのではないかと思われます。

 楽しいことばかりではありません、辛く苦しいこともあるかもしれません、権利と義務が背中合わせであるように。

第二の人生としてシニア婚を考える上では、事後対処ではなく、事前対策(準備)が重要です。

 シニア世代といってもまだまだ精神的にも肉体的にも若さを保っている人たちはたくさんいます。第二の人生と称して今までの生活を変えていく人たちもいるでしょう、しかし、最終的には自分と配偶者に関する相続が発生することを忘れずに、少しずつでも準備をしておく必要があるのではないかと思います。

 

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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