遺言作成・・・重要なのは遺言者の想い

 相続の準備といって、最初に出てくるキーワードが「遺言」といっても過言ではないくらい、遺言書の作成は一般的になってきました。

 最近は「空き家対策」を絡めて自宅不動産を‘負動産’にしないためにはどうするか、などの話題も多くはなってきていますが、やはり揉めないための事前準備ということでは「遺言作成」は相続(争族)対策の代表的な手法であることは間違いないのではないでしょうか。

しかし、遺言が原因で揉めることになった、という話も少なからずあります。

相続(争族)対策のために遺言を作成したのに、争いの相続になってしまった。これは一体どういうことなのでしょうか。

相続のときに争いになるのは「遺産の分け方」について共同相続人の間で話し合いが上手くいかずにお互いに譲らず感情的になってしまうからです。

争いになるのであれば持ち主が自分の亡き後の財産の行方を自分で決めておこう、というのが遺言の果たす大きな役割といえるでしょう。

しかし、作成方法によっては色々と問題のある遺言となってしまい、相続開始後に相続人が困ってしまう(場合によっては争いに発展しまう)ことになるのです。

では、問題となりやすい点をいくつか挙げてみたいと思います。

まず、遺言は法定相続分を変更できる唯一の方法ですから作成に関しても法的に定められています。例えば日付の問題。複数の遺言が存在した場合には一番新しい遺言が優先となりますが、その判断材料が遺言を作成した日付となります。遺言は遺言者の最終意思表示という性格を持ったものですから、日付が重視されますので、「令和元年7月吉日」などという記載では日付が確定されないので、他に遺言があり内容が相反するものであった場合などは、どちらが優先させるかで問題となります。

次に、遺言者が遺言に記す財産が全財産のうち一部だけというケースがあります。

例えば、「自宅不動産を長男の〇〇に相続させる」という一文だけの遺言。このような遺言を「一部遺言」といいますが、「一部遺言」の場合、他の財産をどう分けるかで分割協議をしなければならず、ここで話し合いがまとまらなければ争いに発展することもあり得ます。「一部遺言」で焦点となるのが、指定された財産(例えば、自宅不動産)が遺産分割を決める上でどのような意味合いを持つことになるのか、ということです。「これだけ」なのか、「これを加える」なのか、「人の解釈」という判断に委ねられてしまう内容になってしまいます。ですから、財産の一部だけを指定する遺言は法的には問題ありませんが、実務上では避けるべき方法です。

この他にも預貯金などの財産があるのにも関わらず指定をせずに、「みんなで仲良く分けて欲しい」などの文言で終わらせてしまうケース。これは分け方の指定をしていないので、どのように分けるかで争いになってしまうこともありますので、遺言を書いた意味がありません。

長くなりますので、最後にもう一つだけ挙げておきます。

相続人に秘密の遺言作成です。

相続人全員に秘密あるいは一部の相続人だけに秘密の遺言というのはケーズバイケースで必要なこともありかもしれませんので全否定するつもりはありませんが、問題発生の確率はそれなりに高いのではないかと思います。

相続セミナーなどで専門家と称する人が「無用な争いを避けるためにも秘密にしておきましょう」と言ったり、「遺言作成は相続人には秘密にするものです」と言う専門家もいます。その人たちは相続開始後に遺言の存在が発覚して相続人間で騒動が起きたときの対処法を知っていて、納めることができるという確信があるのでしょうから、とやかくいうつもりはありません。

筆者の持論としては「相続開始前に遺言の作成や内容について揉めるようであれば、相続開始後には必ず揉める」です。

その理由は、遺言者がまだ生存している段階で、遺言を作成すること、あるいは、遺言の内容について不平不満をいうのであれば、遺言者が既に他界している相続開始後に初めて遺言の存在と内容を明かされた場合は、遺言者に詳細を確認することも内容の変更を依頼することもできないから不平不満のある相続人の気持ちはやりどころがなくなるからです。

そして、相続開始前に遺言の作成や遺言内容について相続人に明かし、揉め事になりそうであれば、再考する必要があるということですから、遺言内容を考え直す、あるいは推定相続人と話し合うということが必要になってくるのではないでしょうか。

実際に、遺言作成時に遺言者と相続人となる家族とで話し合いをし、全員が納得した状態で遺言を作成するというケースもあります。

「争族」にならないために遺言を作成するということはそういう手間のかかることだといえますが、遺言者の相続人(家族)に対する想いが一番重要なのでしょう。

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希【プレミアムメンバー】
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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