遺言の工夫

遺産を自分の思い通りに遺す手段として遺言の活用が一般的になってきました。
自筆証書遺言の保管制度が始まったことで、費用負担を考えずに遺言を作成できるようになってきました。更に相続に関する情報がネット上に多く存在することが拍車をかけているのではないかと思われます。
ただ、いまだに、遺言は法的効力があるので書き方が決められていて難しい、遺言で指定した財産は手をつけることが出来なくなるので現金(生活費)が減ってしまう、財産を動かすことができなくて何となく縛られている感じがする、などの間違えた認識をお持ちの方もいるかもしれません。
確かに遺言には法的効力があるために法的要件もありますから、それに従ったものでないと法的効力を持たせることができないばかりか争いの火種になることもありますが、遺言で指定した財産も自由に処分(使う)ことができますし、遺言で指定した財産を処分した場合には遺言の撤回とみなされることになりますので、財産の縛りにはなりません。
遺言を作成することで、自分の財産の遺し方を自分の意思で決めておくことができるというメリットがありますが、書き記す内容や書き方にも注意していかなければなりません。
遺言には法的効力のある遺言事項と、法的効力はありませんが遺言の記載内容としては重要な付言事項があります。
遺言事項の主なものとしては、相続分の指定、分割方法の指定、遺言執行者の指定などがあります。
「何を誰にどれだけ相続させて、この遺言の内容を実現させるのは誰か」という基本的なこと、これが代表的な遺言事項となります。
例えば、「自宅不動産を長男〇〇に相続させる。遺言執行者として長男〇〇を指定する。」というものです。
もう一つ先述しました付言事項とは何でしょうか。世間一般に氾濫している情報では、付言事項として感謝の気持ちを書きましょうというものが多いと思います。確かに、感謝の気持ちもある意味重要ですが、もっと重要なのが「遺言を作成した理由と、遺言で指定した分け方の理由」です。
一般的に人は理由が分からなければ納得することが難しかったり、懐疑的になったりします。それは争いへの入口となってしまう可能性もあります。そうならないためにも理由をしっかり書いておくということが重要になってきます。
では、遺言事項と付言事項以外は書いてはいけないのでしょうか。
必ずしもそうとは言い切れません。
遺言事項に該当しないものについては法的効力がありませんが、遺言者の意思として書き遺すことは意味あることだと思います。
例えば、親の介護をしてくれた二男のお嫁さんに報いるために寄与分のつもりで二男への相続分を増やした形で指定することや二男のお嫁さんへの遺贈は、相続分の指定あるいは遺贈という趣旨では遺言事項ですが、その裏付けとして敢えて、遺言者の想いとしての寄与分の指定(遺言事項ではありませんので、付言事項内での表記となります)という形をとることもケースによっては有効なものになるかもしれません。
以上のように、遺言作成については決まった要件等がありますが、少し柔軟に考えて書く内容を決めても良いかもしれません。
遺言は自分の財産の遺し方を自分の意思で決めておくことができる方法ですが、遺された家族が困らないようにするための方法でもあります。
法的効力があるため法的な要件もありますが、自分の想いを形にすることもできますので、書き記す内容を工夫してみるのも必要だと思います。
そういった遺言の作成を補助する相続士でありたいと思います。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所
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