地籍調査が土地所有者に与える影響

scale今回で4回目になる地籍調査のお話、今回は地籍調査が行われることで、土地所有者にどのような影響を及ぼすのかをお伝えしたいと思います。今回のクライアントの土地については以前わたしのほうで土地調査・簡易測量を行っており、おおよその地積を把握しています。境界杭がある箇所と無い箇所があるのですが、ブロック塀や道路境界等でおおよその境界ははっきりしており、地籍調査を行ったとしても簡易測量との地積の差異はそれほど大きくないと考えられます。

ただ問題なのは、この土地はいわゆる「縄伸び」をしており、簡易測量での地積は約800平米なのですが公簿上の地積は約760平米と、40平米程度実際の地積のほうが大きくなっています。今回の地積調査によりこれが明らかになることで登記し直されることになり、これによって固定資産税の評価額のほか、相続財産としての評価額にも影響が出てくることになります。それぞれ評価額が大きくなりますので、その分税負担も増えるということになります。

「縄伸び」という言葉が出ましたので、ここで「縄伸び・縄縮み」についてもおさらいしておきます。「縄伸び」とは、登記簿謄本に記載された土地の面積より実際に測量をした土地の面積のほうが大きいことを言います。逆に「縄縮み」は、登記簿謄本の面積より実測した面積が小さいことを言います。このようなことが起こる原因としては記載されている面積が、先にもお伝えしたように明治時代に行われた測量の内容をもとにそのままになっている場合が多く技術的な問題があったほか、意図的に登記簿上の面積を大きくして売却時の代金の増加を図ったり、逆に登記簿上の面積を小さくして税負担の軽減を図ったということも考えられています。

実際に、以前わたしが行った土地調査・簡易測量では、その土地を昭和40年代に測量した地積測量図が出てきたのですが、あらためて行った簡易測量の地積との差異が大きかったケースもあります。その当時の図面はまだ手書きのものでしたので、平成に入り図面作成ソフト等で機械的に作成されたものを信用度の高い地積測量図の目安としても良いかもしれません。

また今までの経験上、縄縮みの土地より縄伸びの土地に出会った回数のほうが多いので、今後もこのように地籍調査により税負担が増えるという方が多くなるのではないでしょうか。地籍調査の目的の一つとして「課税の公平化」が挙げられていますが、国としてもできるだけ税収を増やしていきたいというのが本音のところではないかと思います。

公簿上の地積と実測での地積との差異を把握するためには、やはり測量が必要となってきます。今回のような地籍調査が入ることになった際は、隣地との境界確定については隣人との話し合い等が必要となりますが、保有している土地の実際の価値を把握しておくことで事前に実際の固定資産税の評価額のほか相続財産としての評価額も確認することができます。地籍調査の話を切り口に相続のコンサルティングや提案を行っても良いかもしれません。なお、実際の調査は日程調整後に決まりますが、クライアントの立会いの際にわたしも同席をさせていただく予定ですので、調査の実際やどのようなことが行われたか等の結果についても、機会があればこちらのコラムでお伝えしたいと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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