相続税が改正されてどう変わった?
2015年(平成27年)に改正相続税法が施行され、基礎控除額が引き下げられたことによって、今まで相続税とは無縁だった世帯についても相続税を支払うことになるかもしれないということで、2015年前後は相続に関するセミナーが活発に行われたり、書籍が発売されるなどして、多くの方が注目をした時期でもあったと思います。
国税庁から発表されている相続税の申告状況によると、2014年(平成26年)に亡くなった方は1,273,004人、そのうち相続税の申告書(相続税額があるもの)の提出に係る被相続人数は56,239人、相続税がかかる財産を持っていた被相続人の割合は4.4%となっています。この割合は例年大きな変化はありませんでしたが、2015年より相続税の基礎控除額が縮小されたため、この割合がどのくらい増えるのかが注目されていました。
昨年(2016年)末に2015年分の統計が発表されていますので、まずは2014年分と比べてどのようになったのかを確認していきたいと思います。
2015年に亡くなった方は1,290,444人と約1.4%の増加となっています。そのうち相続税の申告書(相続税額があるもの)の提出に係る被相続人数は103,043人と前年より46,000人以上増え、相続税がかかる財産を持っていた被相続人の割合は8%となっています。やはり基礎控除額の縮小によって、相続税を支払う対象となった人が大幅に増えていることがわかります。
・国税庁:平成26年分の相続税の申告状況について
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/sozoku_shinkoku/index.htm
・国税庁:平成26年分の相続税の申告状況について(統計情報)
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/sozoku2014/sozoku.htm
・国税庁:平成27年分の相続税の申告状況について
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/sozoku_shinkoku/index.htm
2014年分の納付税額の総額は1兆3,908億円、被相続人1人あたりの納税額は2,473万円、それに対して2015年分の納付税額の総額は1兆8,116億円、被相続人1人あたりの納税額は1,758万円となっています。税額は増えたけど1人あたりの税額が減ったということは、やはり基礎控除額の縮小で、納税する人は増えたけど納税額はそれほど多くないという傾向となったのでしょう。国としては、今まで相続税がかからなかった層からも広く浅く税金を納めてもらうという、一定の効果はでたのではないでしょうか。
上記のページには申告状況の概要のほか、詳細な統計が記載されています。平成27年分の統計情報についてはまだ発表されていませんが、課税価格がいくらの被相続人が何人いたかをまとめた「課税価格階級」等も掲載されています。
「相続財産の半分は不動産」とよくいわれていますが、相続財産における土地・建物を合わせた不動産の割合は43.3%、土地だけを見ると38.0%と、ここ10年ではじめて4割を切りました。それに対して現預金は30.7%と、ここ10年ではじめて3割を超えました。とはいっても土地の場合は評価額も高く、相続財産に占める割合が高いことに変わりはありませんので、事前に様々な相続対策を検討しておくことが必要となってきます。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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