死亡保険金の「非課税枠」をこれから活用する場合は‥‥。

ご承知のとおり、生命保険の死亡保険金には、「法定相続人×500万円」の非課税限度額(非課税枠)があります。家族構成が「父・母・長男・次男」だった場合、父が亡くなった時に法定相続人である3人が受け取る保険金のうち、1,500万円までは相続税の課税対象にならないという制度です。

この制度を利用して、例えば50歳のお父さんが契約者・被保険者となり、母・長男・次男を受取人とした3つの500万円の生命保険に加入をすれば、それぞれが受け取る保険金については相続税の課税対象にはならないということです。ほかの財産の額や保険に加入してから亡くなるまでの時期にもよりますが、支払った保険料よりも多くの保険金を受け取ることができ、受け取った保険金を遺産分割資金や納税資金の一部に充てることもできました。

ただ、以前のコラムでもお伝えしたとおり、2017年4月に多くの保険会社が「予定利率」の引き下げを行い、円建ての保険商品、とくに貯蓄性のある終身保険などは保障の効果が大幅に減少してしまいました。

先の例で言えば、50歳のお父さんが保険料を65歳まで支払う契約で500万円の生命保険に加入をしたとしたら、65歳まで支払う保険料は、多くの保険商品が500万円を上回ってしまうということです。

「だったら保険に加入する意味がないのではないか」ということになりますが、相続税がかかることがわかっていて、被相続人となる方が現金を多くお持ちの場合には、現金で持っているよりも生命保険に加入をしたほうが、課税対象となる相続財産を減らすことができると思います。

 

また、例えば80歳のお父さんの相続対策を考えたいときに生命保険を活用したいとなった時には、多くの場合健康状態や過去の病歴などによって、通常の生命保険には加入できないケースが多くなります。現在入院・通院・服薬をしているか、過去数年の間にお医者さんにかかったことがあるか等、加入をする際に記入をする「告知書」の「はい」の項目に該当して、加入することができないためです。

このような方のために、各保険会社は職業告知だけで加入をできる「一時払」の終身保険を販売していました。500万円の死亡保障を準備するために500万円を契約時に支払うという、保障の効果はほとんどない商品なのですが、非課税枠を活用していない高齢の方にはメリットがあり、数年たてば契約時に支払った保険料よりも多くの解約返戻金が受け取れるということで、金融機関の窓口を中心に爆発的に売れた商品でもあります。

 

ただこの商品も予定利率の引下げの影響で、多くの保険会社が商品を販売停止としてしまって、現在販売されている商品は皆無に等しい状態となっています。

このように、以前に比べて生命保険の非課税枠を活用するメリットが少なくなっていますが、保険商品によってはまだまだ使える商品は残っています。「非課税限度額」という税制上のメリットを活用したい場合には、生命保険への加入を検討されてみてはいかがでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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