“相続税大増税時代”に突入するも相続対策で最も大切なのは「遺産分割対策」

■もめない「円滑な相続」が一番

昨年2015年1月の相続税法改正を前後して、現在も各業界がいわゆる「相続ビジネス」に注力をしています。税理士や司法書士・弁護士などの各士業・保険業界・不動産業界・銀行・証券業界・葬儀業界までが相続に関するセミナーやイベントを行い、一般の方の相続に関する関心が以前よりも高まっています。また、コンサルティングを行う専門家向けに、相続に関する資格や教材を提供するビジネスも活発になっています。

このようなセミナー等では、節税対策や納税対策を切り口にしたものを目にすることがよくありますが、相続にとって一番大切なのは遺産分割対策、できるだけもめない相続を実現することなのではないかと思います。

もめない相続を実現するためには、できれば被相続人となる人が生前に対策を考える必要があります。そのような方にコンサルティングを行う場合、まずは現状確認、被相続人(となる人)と(推定)相続人の属性の把握が必要となります。

年齢や配偶者の有無、どこに住んでいるのか、代襲者はいるのかなど、家系図や相関図を作成してあらかじめまとめておきます。あわせて被相続人(となる人)の財産内容の把握、現預金や有価証券、不動産や自社株式など、財産目録を作成することで、顧客の頭の中を整理してあげる必要があります。

その後で、どのように財産を分けるのか・相続税はかかるのか・かかる場合にはどのように払うのか・節税対策は行えるのか、等を検討していく必要があるのではないでしょうか。ここで勝手ではありますが、「相続でもめないための10カ条」をまとめてみましたので参考にしていただければと思います。

もめない相続のための10カ条
・遺産分割、納税、節税の順番に考える

・被相続人となる人の財産内容を把握して、定期的に評価を行う

・相続人となる人(推定相続人)は誰なのか、把握しておく

・遺言書の有無の確認、ある場合は各推定相続人が内容を把握する

・被相続人となる人と各推定相続人との間で相続について話し合いの場を設ける

・できれば生前に遺産分割案を作成する

・遺留分、特別受益、寄与分を考慮して遺産分割案を作成する

・不動産の共有はしない

・分ける財産が無い場合は代償交付金の準備、対策をしておく

・思い立った今から対策を考える

 

■相続対策を左右する土地評価の知識

現状確認で一番重要かつ複雑なのは不動産、とくに土地の評価についてです。地主や賃貸オーナー等の場合、財産の大半が不動産となるケースが多いので、土地の評価額が相続税額に大きく影響してきます。この評価額をできるだけ小さくすることにより、相続財産全体の評価額と相続税額を低く抑え、顧客の財産を守ることがコンサルティングにとって必要です。

ただ、不動産の評価の方法は様々で、評価を行う専門家の知識やスキルによっては同じ土地でも10の評価が8や6になったりもします。できるだけ正しい評価・評価額を下げるコンサルティングを行うためには相続に関する土地評価の知識が必要なのはもちろん、現場へ足を運び利用区分・地形の確認や測量を行い、実際に目で見て土地の属性を確認することも必要となってきます。とくに東京23区以外では、公図や住宅地図と現場が違うケースが多く、登記簿謄本の地積との差異(縄伸び・縄縮み)がありますので、机上の評価だけでは不十分と言えます。

■相続税に関心が集まっている今こそ、相続でもめないための対策が必要

相続に関する関心が高まっているのは良いことだと思いますが、相続税が改正された現在も約9割の世帯には何も影響が無いということになりますので、ほとんどの世帯にとって大切なのは相続「税」ではなく、相続発生後にもめない「遺産分割」をすることにあります。これは税法が変わる、変わらないに関わらず、昔も今もこの先も変わらないことだと思います。

顧客に相続税がかかるのか、それともかからないのかによって対策が変わってきますが、共通して言えるのは「もめない対策」を事前に立てておくことです。今後も、もめないためにはどのような対策を立てれば良いのか、どのようなアドバイスを行えばよいのかをお伝えしえ行きたいと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

相続士資格試験・資格認定講習のお知らせ

日本相続士協会が開催する各資格試験に合格された後に、日本相続士協会の認定会員として登録することで相続士資格者として認定されます。また、相続士上級資格は上 級資格認定講習の修了にて認定されます。