土地の相続税評価額算出に欠かせない「利用区分」のお話

土地の所有者が負担する「固定資産税」では地番ごとに評価額が決められていますが、相続財産としての土地の評価は地番ごとではなく「利用区分」ごとに行います。相続士スクールでもお話をしましたが、今回はおさらいも兼ねて、土地の相続税評価額を算出する際に重要となる利用区分についてお伝えします。

「地目」と「利用区分」

前回のコラムでもお伝えしたとおり、土地の利用状況を表すものとして登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている「地目」があります。地目は宅地・田・畑・山林など、その土地が今どのような状態なのかを表すもので、すべての土地は23に区分されています。

それに対して利用区分は、相続発生時に被相続人所有の土地がどのような利用状況や権利関係にあったのかによって区分されます。具体的には自宅として被相続人自身が使っていた、他人に土地を貸してその土地に他人の建物が建っていた、被相続人自身が建てた賃貸用のアパートやマンションが建っていた、借地権が設定されている土地、などです。

利用区分は土地の相続税評価額に影響してくる

このように相続発生時の土地の利用状況を確認したうえで、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表)」に利用区分を記載します。今回は土地評価の現場で多く目にする5つの利用区分をお伝えします。

1.自用地

被相続人の土地に自宅が建っていて被相続人やその家族が住んでいた、被相続人の土地に自宅兼店舗の建物を建て個人経営していた、といったケースです。また被相続人の土地を子供に無償で貸し、その土地に子供が自宅を建てて住んでいた場合も自用地となります。

2.貸宅地

被相続人の土地を他人に貸して、他人がその土地に建物を建て住んでいるケースなど、借地権の目的となっている土地です。貸宅地の評価額は、自用地として評価をした額からその土地の借地権割合を引いて計算されます。

・貸宅地の評価額:自用地評価額×(1-借地権割合)

3.借地権

他人から土地を借り、そこに自宅を建てて住んでいた方が亡くなった場合には、その土地を借地権として評価します。自用地の評価額にその土地の借地権割合を掛けた額となります。

・借地権の評価額:自用地評価額×借地権割合

4.貸家建付地

被相続人の土地に被相続人名義の賃貸アパートやマンションが建っているケースが該当します。

・貸家建付地の評価額:自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

5.私道

「専ら特定の者の通行の用に供されているもの(道路)」が私道となります。私道の評価額は、自用地の評価額の30%と決められています。ただし、公道のように不特定多数の人に使われていたという実態があれば、評価額がゼロになるケースもあります。

土地の相続税評価額はこのような利用区分ごとに行っていきますが、一筆に複数の利用区分、複数の筆に複数の利用区分が存在するケースでは、相続士スクールでもお伝えしたように現場での判断と土地の測量などが必要となってきます。土地の評価額は相続財産全体に大きく影響してくることもありますので、クライアントの利益はもちろんのこと、相続実務に携わる専門家の責務としても正確な評価を行うことが必要となります。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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