判断能力が低下してきた時に、任意後見人に財産管理等を依頼するには?

最近忘れっぽくなった、物をしまってある場所がわからなくなった等、自分の判断能力が低下してきたと感じた場合には、任意後見人に財産管理等を依頼できます。今回は任意後見契約の効力を生じさせるための申立てに必要な手続き等についてお伝えします。

事前に任意後見契約を締結しておく

任意後見人に財産管理等を依頼するためには、事前に公正証書による「任意後見契約」を締結しておく必要があります。この契約をしないと任意後見制度は利用できませんので、自分の判断能力が正常なうちに任意後見人を選定し、公証役場で契約手続きを行う必要があります。

それに対して「法定後見制度」は、自分の判断能力が低下した後に利用できる制度です。この制度では後見人を選定できす、裁判所が後見人を選定し財産管理等が行われます。このため、自分の財産管理や身の回りの手続き等を信頼できる人に依頼したい、という場合には、事前に任意後見契約を結んでおくことが大前提となります。

裁判所に申立てをする

任意後見契約の効力を生じさせるためには、住所地を管轄する家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立て」を行う必要があります。任意後見監督人には任意後見人を監督する役割があり、任意後見人が契約の内容どおりに責務を果たしているかを、提出される書類等で定期的に確認・監督などを行います。

申立ては後見契約を締結した委任者(本人)・受任者(任意後見人)の他、本人の配偶者や四親等以内の親族が行うことができます。自分が「最近判断能力が低下してきた」と感じた場合や、任意後見人や親族が見て「本人が財産管理等を行える状況ではない」等と判断した場合に申立てを行い、次のような書類等が必要になります。

【申立てに必要な書類】
1.任意後見監督人選任申立書
2.申立事情説明書
3.任意後見受任者事情説明書
4.親族関係図
5.本人の財産目録及びその資料(不動産の全部事項証明書,預金通帳のコピー等)
6.本人の収支状況報告書及びその資料

申立てに至った経緯や任意後見契約を締結したいきさつ等の他に、申立時の本人の財産の内容や収支状況等の報告が必要です。親族や知人等を任意後見人に選定することもできますが、このような書類等の作成・提出が必要となりますので、任意後見人は司法書士・行政書士等の専門家を選定しておいたほうが安心だと言えます。はその他、任意後見契約公正証書のコピーや本人・任意後見人の住民票等を提出し、手続きが進められます。

申立て後の手続きの流れ

申立てが行われた後は、本人の意思を尊重するために申立ての内容について、同意の確認が必要となります(本人調査)。本人調査は原則として本人が家庭裁判所に行く必要がありますが、入院等により外出が困難な場合は、家庭裁判所の担当者が入院先等に行き確認を行います。また、必要に応じて受任者(任意後見人)からも事情を聴取する場合があります。

その他、本人の親族に対して申立ての概要などを伝えると共に、申立て関する意向の確認をする場合があります。さらに、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するために鑑定が必要となる場合もあります。

このように、

1.本人の心身の状態並びに生活及び財産の状況
2.任意後見受任者の職業・経歴
3.本人の意見

などを考慮して総合的な判断が行われ、弁護士・司法書士・社会福祉士等第三者の専門家が任意後見監督人として選任され、任意後見契約の効力が生じます。判断能力が低下した人の財産を本人以外が管理等を行う制度ですので、様々な手続き等が慎重に行われます。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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