広大地評価改正の行方

平成29年度税制改正大綱の中で広大地評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、評価対象地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに適用要件を明確化すると示されました。

現行の広大地評価は平成16年に改定し今日に至っています。以前は開発図面の作成など適用が煩雑であったことから、評価額の算定の簡便化が平成16年基準のポイントで、最低でも4割引評価になります。しかし、評価対象地がそもそも広大地に該当するか否かの判断が難しく、平成17年に「資産評価企画官情報第1号(17年情報)」で広大地判定のフローチャートなど示されたものの、依然として広大地判定の難しさが相続の現場において常にありました。

今回改正にあたり、6月22日に国税庁から財産評価基本通達の改正案に係るパブリックコメントが示されました。有識者から意見を募るものですが大方ここに示された形で決まっていくものと思われますのでこの改正案を少し見ていきたいと思います。

財産評価基本通達20-4に広大地が示されていますが改正により廃止されます。これに代わり新たに20-2として「地積規模の大きな宅地の評価」が設けられています。

改正案は末尾にリンクを示しますが、概略を示すと次の通りとなります。

1地積規模の大きな宅地

①三大都市圏…500㎡以上の地積の宅地

②三大都市圏以外…1,000㎡以上の地積の宅地

但し次のいずれかに該当するものを除く。

・市街化調整区域に所在する宅地(一部例外あり)

・都市計画法に規定する工業専用地域に所在する宅地

・建築基準法に規定する容積率が40/10(東京都の特別区などは30/10)以上の地域に所在する宅地

 

2評価方法(路線価方式を前提)

評価額 = 路線価 × 各種補正率 × 規模格差補正率 (今回新たに設けられたもの) × 地積

 

現行の広大地評価は路線価に広大地補正率を乗じて計算し奥行価格補正などは考慮しませんでしたが、今後(上記算式)は従来の奥行価格補正や不整形地補正など各種補正率を乗じた上で地積規模の大きな宅地による補正率を乗じる形に改められる模様です。

この改正案による評価は平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した場合に適用される予定になっています。

多くのケースでは現行の広大地補正率を乗じて評価する場合のほうが評価減できると思われますので、考えられる相続税対策として、今年平成29年中に贈与(例えば相続時精算課税を活用するなど)することで現行の評価をすることができます。但し、これは相続士試験でも頻出論点の一つですが、贈与した宅地は将来の相続税申告において小規模宅地等の特例の適用を受けることができませんので、小規模宅地等の特例の適用を受け税額軽減を検討している宅地に関してはくれぐれも取扱いにはご注意ください。

「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募手続の実施について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410290035&Mode=0

 

 

このページのコンテンツを書いた相続士

淡路 幸史
淡路 幸史
税理士、CFP、相続士
1973年東京都生まれ。1995年日本大学法学部を卒業し、翌1996年に税理士試験合格。会計事務所勤務等を経て、2003年横浜市都筑区にて税理士事務所を開業。

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