相続とお墓 その2

前回は、祭祀承継問題の一つめ、祭祀承継者となった者とそうでない者との遺産分割問題についてでした。今回は二つ目に挙げた承継そのものの問題についてお話ししたいと思います。

相続の準備の時に、祭祀承継問題は意外と軽視されがちと前回お話ししました。

祭祀承継問題で代表的なケースは、子供は二人とも娘で結婚して嫁いでしまう場合や、長男と長女の一人っ子同士である場合などが挙げられます、このようなケースでは親がいなくなった後、さてどうしたものか、となってしまい、子供達が苦労するのは目に見えています。

相続の準備時に祭祀承継問題に触れない場合は、承継する側(相続人)もお墓等の詳細についてよく理解していないケースがほとんどです。例えば、大きな問題の一つとして「お寺等との関係」です。お布施の問題も含めて、どのようなお付き合いをしてきたのか不明な場合、相続後に対応する者が大変苦労するのは明らかです。

この点、意外と親も子もあまり意識をしていないというか、気づいていないというか、自主的に触れようとしないケースが多いのではないかと思います。相続士或いは終活士等の専門家が「気づき」を与える必要があるかもしれません。

終活がブームとなった昨今では「墓じまい」というフレーズも出回っています。「墓じまい」というと墓を閉じて供養をしないというイメージになりやすく、実際にそう捉えている人も少なくないそうです。

終活ブームの中で、お墓や葬儀などは簡素にすることが良いことと提案する専門家と称する人がいて、その影響でそう考える人たちも増えて、歪曲して、「お墓はない方がいい」と考える人たちが増えているというような意味合いで「墓じまい」という言葉が使われていることがあるそうです。

そこに危機感を持った「全国石製品協同組合」は公式見解を発表して、「墓じまいとは、お墓を撤去して更地に戻すことだけを指し、「改葬」をするプロセスの一つと位置付けているようです。

終活の専門家としてビジネスを行う我々は、上っ面だけを捉えて提案するようなことは避けなければなりません。お墓や葬儀などは簡素に、という場合でも、万人に等しくではなく、ひとつひとつのケースに落とし込んで話し、提案していくべきではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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