遺言と遺書は同じもの?

相続対策の代表とも言える「遺言」。

数年前までは、「遺言?縁起でもない!」と忌み嫌われ、拒否されることが多いものでしたが、昨今の相続ブームとでもいいましょうか、社会的傾向として、遺言は相続対策に有効なものとして考えられ、専門家からは積極的に勧められ、本人も忌み嫌うことなく作成の意思表示をすることが多くなってきました。

遺言が一般化されてきたとでも言いましょうか、相続の準備を考える上では当たり前の手法となってきたのです。

しかし、一気に広まったこともあり、十分な知識を持たずに「遺言」を口にするようになり、間違った(法的に効力のない)遺言を作成したり、相続開始後に相続人間でトラブルになってしまう、つまり争族の火種となってしまう遺言を作成してしまうことも多いようです。

遺言の間違いや勘違いというものは一般の方はもちろんのこと、専門家として遺言に携わる人の中にもあります。

例えば、「遺言」と「遺書」です。

文字こそは似ていますが、似て非なるものです。しかし、一般の方の中には「遺言」と「遺書」を混同して同じ意味で使用していたり、相続の専門家であると称する人の中にも混同して使用している方もゼロではありません。

では、「遺言」と「遺書」は何が違うのでしょうか。

人により解釈の違いがありますので、若干の差異はありますが、絶対的に違うのは、「法的効力の有無」です。

「遺言」は法的効力があります、それ故に様式が定められています。法律で定められた方法にのっとって作成しなければならないという規則があります。日付、署名捺印、自筆証書遺言の場合の全文自筆、公正証書遺言の場合の民法969条の要件、法的効力を有する遺言事項などです。

しかし、「遺書」は法律で定められた方法にのっとって作成しなければならないという規則がありません、それ故に法的効力がありません。

「遺言」で不動産の移転登記はできますが、「遺書」で不動産の移転登記はできません。

そして、解釈の違いがあるので断定はしませんが、私の個人的な考えとしては、

「遺言は、書く本人(遺言者)が自分自身の生をまっとうしたした後に残される家族のことを想い、自身の財産の帰属先を考えて元気なうちに書くもの」ですが、「遺書は、残念ながら自ら命を絶つ時に書くもの」であると思います。

「遺言」と「遺書」、似て非なるものです、間違いのないように、お気をつけください。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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