自筆証書遺言と公正証書遺言

今回は相続初心者の方向けに相続の基礎についてお話ししたいと思います。

今回のテーマは「自筆証書遺言と公正証書遺言」です。

遺言という言葉は皆さんもお聞きしたことはあると思いますが、では遺言とは何でしょうか、どういう性質のものなのでしょうか。

遺産分割において法定相続分が基本となることはご存知のことと思いますが、その法定相続分を法的に変更できる唯一の方法が遺言なのです。繰り返しになりますが、遺言によって法定相続分を変更することができるのです、この遺言による相続分を指定相続分といいます。

この遺言は、世間でよく言われる「争族」を防止するために有効な手段とされています。

では、遺言についてもう少し詳しくみていきましょう。

遺言は、遺言者(遺言を作成した者)の最終の意思表示について、遺言者の死亡と同時に法的効果を生じさせるもので、15歳以上の意思能力を有する者なら単独で(法定代理人の同意は不要)作成できます。意思能力とは、自分の行為がどのような結果を引き起こすのかを判断する能力のことです。

遺言にはいくつかの種類がありますが、今回は自筆証書遺言と公正証書遺言についてのみお話しさせて頂きます。その他の遺言(秘密証書遺言や一般危急時遺言など)は別の機会にお話しさせて頂ければと思います。

自筆証書遺言とは、文字どおり全て自分で書く(自筆)遺言です。全文自筆で、日付や署名も自書し、押印することが必要です。財産目録を添付する場合も自筆でなければなりません。

これらは法的要件でありますから、例えば、自署するところをゴム印等を使用してしまいますと自筆証書遺言の法的要件を欠き無効となってしまいます。

ここで勘違いされやすい点を一つ挙げておきますと、自筆証書遺言は封入して封締めすることまでは法的要件とされていません。封締めされていないから無効ということはありません。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人によって公正証書で作成される遺言です。こちらは自分で全てを自筆で書かなくても大丈夫です。

口頭で公証人に伝えることで公証人が作成します。公正証書遺言の法的要件は民法969条に規定されていますが、難しい話になるので今回は省かせて頂きますが、一つだけ覚えておいて頂きたいのは、公正証書遺言を作成する際には証人が2人必要ということです。つまり、遺言者と公証人、そして証人2人の計4人が遺言作成に関わる訳です。

自筆証書遺言だと相続開始後に家庭裁判所での検認というプロセスを経なければなりませんが、公正証書遺言であれば検認は不要です。

一般的に公正証書遺言を勧める専門家がほとんどです。

筆者も公正証書遺言が優先と考えますが、場合によってはとりあえず自筆証書遺言を作成しておいて、変更等が完全にないという段階(年齢)になったら公正証書遺言で作成するという方法でも良いと思います。自筆証書遺言の方が「書き直す」「内容を変える」等の作業が公正証書遺言より簡単にできるからです。

ただし、その場合には作成済みの自筆証書遺言は完全に破棄しなければなりません、遺言は日付が新しいものが優先となりますが、古いものでも内容が違う遺言が遺っていて、それが発見されてしまうと揉める元になるからです。複数の遺言を作成する場合には注意が必要です。

因みに、作成済みの公正証書遺言と内容の違う新たな公正証書遺言を作成する場合には、撤回する旨を書いておくべきです。

自筆証書遺言と公正証書遺言について簡単に違いをお話ししてきました。遺言はただ作成すればいいというものではなく、やはり書く上でのポイントというものがあります。

遺言作成を考えるときには、必ず専門家に相談して、書く内容や書き方等をよく吟味した方がいいでしょう。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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