相続税対策のアパート・マンション建設は正しい選択か?

 

ここ数年、アパートやマンションの建設が過熱しているように見えます。筆者の周辺でもアパート・マンション建設ラッシュのように次々と建っています。が、その横で数年放置されている空き家もあるのが現実です。

国土交通省によりますと、2016年に貸家の着工数は約41万8500 戸で前年比プラス10.5%、2008年のリーマンショック以降減少していましたが、この5年間は前年比でプラスになっているようです。

これは2015年の税制改正による相続税の増税が背景にあるようですが、それに加えて銀行(特に地銀が多いようですが)による不動産融資への傾斜と相続税対策を謳った業者の地主への過大な営業活動が要因のようです。

果たして、このアパート・マンションの建設ラッシュ、まるでバブル期を思い出させるほど顕著になっていますが、いつまで続くのでしょうか、また、この選択はオーナーにとって正しい選択だったのでしょうか。

現在、注目されている「空き家問題」と背中合わせのような気もします。

アパートやマンションを建設するオーナーの目的は、土地の有効活用、または、相続税対策といったものが主流かと思います。土地の有効活用ということであれば、使い道のない放置してしまいそうな土地を有効にという目的なので、考え方としては間違い無いと思います、アパート・マンション建設が適切かどうかは別としてです。

しかし、相続税対策が目的の場合は、考え方として間違いであるかもしれません。なぜなら、相続税対策を真っ先に考えたのであれば、考える順番が違うからです。

相続税対策は相続対策の一つです。相続対策には、遺産分割対策、納税対策、節税対策があり、考え方もこの順番に考えるのが基本です。アパート・マンション建設は節税対策に分類されますので、考え方として一番最後です。

まずは、遺産となる財産が現状で分けることができるのか否か検討しなければなりません、その上で、仮に決めた分け方で揉めないか、何か問題は発生しないかを検証していくのが遺産分割対策です。

これを抜きに節税対策に走ってしまうと、せっかく分けられる状態の財産だったのに、分けられない財産になってしまったということもあります。

例えば、単純な話ですが、同等のアパートが2軒並立して建っていて、このままであれば2人の相続人にそれぞれ1軒ずつ相続させることができたのに、税金対策の名目で、2軒を壊し2軒分土地全部を使って1棟のマンションを建ててしまったとしたら2人で分けることはできません。共有にして家賃収入も分ける?とんでもない、最初はこれは良いと思うかもしれませんが、後々細かな問題や相続問題が発生するのは目に見えています。

相続の準備として色々考えるのは重要なことです。しかし、考えるのにも優先順位がありますので注意が必要です。遺産分割対策を検討して、納税対策も検討して、最終的に節税対策としてアパート・マンション建設が最も妥当策であるという結論が出たのなら問題ないと思います。

相続税対策として、アパート・マンション建設関係の業者さんや不動産融資を持ちかける金融機関があったら、まずは相続の専門家に相談してください。話を持ちかけてくる方はその道の専門家ではありますが、相続の専門家では無いケースがありますから。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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