相続の専門家ってどんな人?

巷では相続ブームとでもいいましょうか、相続の専門家を名乗る人や業者が溢れています。今まで相続というものを知ってはいたものの、業務的には手を出さなかったり、避けていたり、無関心であったりした人たちが「相続」というものに注目してきた結果だと思います。背景には、業績不振、販路の確保、新規事業の立ち上げなどが挙げられると思います。

例えば、昨今のアパート・マンション建設ラッシュ、税制改正による相続税の増税を機に、相続税節税対策を唱い資産家等に旧建物等の取り壊しや土地活用を検討させ実行に持ち込むというものですが、旧建物等の取り壊しや土地活用という面では有効的手段となるのかもしれませんが、それが相続対策となるのかは疑問です。

確かに、節税にはなるかもしれませんが、分割できない財産になっていないかなどということは考えていないわけです。しかし、話を聞いた資産家等の本人は相続対策だと思い込んでしまいます、結果、相続対策として行ったつもりのアパート・マンション建設は遺産分割時に分けようのない遺産となってしまい、せっかくの対策も意味をなさなくなってしまうのです。

つまり、この場合、アパート・マンション建設を提案した人はその道の専門家ではありますが、相続の専門家ではないのです、相続対策(節税対策)を呼び水としてアパート・マンション建設という商品を売りたいのです。

次に、多くの方が加入している生命保険。生命保険を販売している方は金融に関する多くの知識を身につけて、ファイナンシャルプランナーの資格を有している方も多く、専門家意識が高いのも事実です。そして、生命保険の支払いという人の死に接する機会も多く、相続に近い立場にいます。

ただ、生命保険を販売している人=相続の専門家、とは言えません。中には相続の専門家と言える人もいるかもしれませんが、数少ないと思います。生命保険の場合、相続対策の手段として利用価値が高いので、それを販売する側が相続の専門家と勘違いしているようなケースも珍しくありません。多くの場合、相続対策を呼び水として生命保険を売りたいのです。

そして、一般的に相続の専門家と呼ばれ易い「士業」の方達はどうでしょうか。弁護士・税理士・司法書士・行政書士などです。

辛口でいいますと、各々の分野での専門家ではありますが、必ずしも相続の専門家とは言い切れません。中には、専門分野以外を進んで学び自分自身をレベルアップしている士業の方もいますが、多くは自身の資格のみで相続の専門家と言ってしまっているようです。

では、どういう人が相続の専門家なのかと言いますと、他のコラムでもお話ししていますが、「相続全体を見て具体的に処理(対応)することができる人」です。そして、相続の分野にはその分野の専門家しかできないこともありますので、それを理解してその分野の専門家とも連携し、マネジメントしながら具体的に対応していくことができる人です。

「解決力」とでも言いますか、それを有する人で、かつ、自分と相性が良さそうな人を選ぶことが重要でしょう。ですから、時間の許す限り、色々な専門家と会って話をするのがいいと思います。

辛口で先述したアパート・マンション建設関係の方や生命保険を販売する人、各種士業の方の中にも相続の専門家はいると思います。

その人の本当の専門は何なのか、という点を外さずにチェックし、親身になって話を聞いてくれる専門家を探して見てください。

あなたにとっての相続の専門家が見つかるかもしれません。

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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