相続は誰のため?・・・世代による価値観の相違と生前準備の必要性

戦後の経済成長からバブル経済まで日本の経済を支えてきた団塊の世代、その子供たちである団塊の世代ジュニア世代、バブル世代、就職氷河期の世代、ゆとり世代などなど、戦後の日本の経済状態等により様々な呼び名でその時代の人々を表してきました。最近では、シェアリングエコノミー世代というのもあるようです。

時代により日本の経済状況も変化していき、そこに生きている人々の考え方にも影響を与えてきました。

では「相続」という視点ではどうなのでしょうか。

相続の歴史を見ていきますと、「家」というものが重視されてきました。家を誰が継ぐのか、という問題です。もちろん家督相続時代には長男が家を継ぐのが当たり前でしたし、そのようにして代々家を継いできたということはいうまでもありません。

しかし、戦後の平等教育を機に家督相続から平等相続へと移り変わってきました。相続人は皆平等に相続する権利があるという意識が芽生え広がっていったのです。そこに、平等という意識があるがために芽生える他の相続人との比較、妬み、やっかみ等、争いの種が増えていきました。いかに争わずに相続を終わらせるか、大変厄介な問題が相続には付いて回ります。

ここ数年特に相続というものが一般に認識され始め、社会的にも今まで以上に相続というものが語られるようになってきました。

それと並行して発生してきたのが、「空き家問題」です。空き家問題の原因の一つが相続です。遺産分割時に共有にしてしまったがために起こる空き家や、未分割状態のままの空き家、負の財産として誰も欲しがらないために起こる空き家など、細かく見ていくと様々な要因があるようです。

そして、相続人にとって負の財産となる不動産(負動産と揶揄されることもあります)があるために、相続そのものを放棄するというケースも出てきました。

現在の生活が満足いくものであり、親の財産をあてにしなくても十分に生活していける相続人や十分とはいかなくてもそこそこの生活ができているので厄介ごとは引き受けたくないという相続人、海外勤務が多いので面倒な不動産はいらない相続人など、相続放棄を選択する相続人もいるのではないでしょうか。

また、前述したような団塊の世代やバブル世代、ゆとり世代などの世代間による価値観の違いも今後の相続に影響を与えそうです。現在の50代以降の人たちは車を所有することに価値がある車社会全盛期を経験してきた世代です、しかし、最近の若者は車にはあまり興味がないようで所有率も低いようです。所有するより必要な時だけ使うという価値観により、カーシェアリングなるものがビジネスになっています。

ということは、「家を所有する・承継する」という価値観は世代とともに変化していっているのではないでしょうか。

現在相続人となる世代は40代・50代などが割合的には多いと思いますので、まだ所有という価値観の方が優位なのかもしれません、しかし、今後10年くらいで価値観の割合が変化していくかもしれません。

現在の所有者が、「この家は〇〇に継いでもらいたい」と思っても、当の本人は所有を嫌うかもしれません。親が子供のために遺すと思っても、場合によっては子供にとっては迷惑な話になるかもしれません。

今まではどちらかというと、一般の人は相続開始後に重きを置かれて人が多いと思います(相続開始前はあまり考えていない)が、今後は、特に、財産を承継する人が積極的に自分の亡き後の財産のことをよく考えて準備しておかなければならない時代になっていくのではないでしょうか。

折しも、「終活」が広まり始めている時です、自分の財産をどうするか、あとはみんなで話し合って決めれば良いという相続人任せではなく、自分自身でしっかり考えて準備をする必要があるのではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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