遺産分割協議の際に留意したいこと

相続の山場となる遺産分割協議ですが、遺言がない場合の遺産分割は法定相続分どおりに分けなければならないと思っている人が多いようです。

専門家と称する人の中にも“遺言がない場合には法定相続分に従い・・・”と言っている人がいるようです。これは間違いとは言い切れませんが、専門家としては未熟です。

結論から言ってしまえば、共同相続人間で話しあった結果が法定相続分どおりでなくても一向に構わないのです、全員一致でオーケーが出ればそれでいいんです。権利濫用や公序良俗違反、詐欺や強迫などがない限り法定相続分と異なる遺産分割も有効です。

ただ、この時に注意しなければいけないのが、被相続人に負債があった場合です。遺産分割協議により法定相続分と異なる分割を決め、負債に関しても共同相続人間で分割協議して合意が得られたとしても、その合意は債権者には法的に対抗できません。混乱してしまうかもしれませんが、債務は法定相続分どおりに承継してしまうのです。(要は、債権者を守るためです)

遺産分割協議に臨むにあたり、次に注意しなければならないのは、被相続人の介護をした人が共同相続人の中にいるかどうかということです。介護をした人の様々な苦労は介護をしない人には分かりませんが、察することはできるはずです、その上で分割財産の上乗せ等の配慮があると望ましいことです。

一般的には寄与分と呼ばれるものですが、これがために争いにも発展してしまう厄介な性質のものです。ですから、この場合の介護をしていない相続人の対応としては、介護をしていた相続人に対しての配慮が必要になってきます。自分の取り分の主張だけではダメだということです。ある意味の許容が必要になってくるでしょう。

他にも各家庭により考慮しなければならないことはあるでしょう。各相続人の様々な要因を考慮して具体的相続分を話し合いにより決定していかなくてはなりません。

民法に規定されている法定相続分ばかり目が行きがちですが、このような規定も存在します。

「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。(第906条:遺産分割の基準)」

遺産の性質等も考慮しながら相続人の事情も考慮して遺産分割を行いなさいという指針でもあります。

遺産分割協議の場というのは、争いの場と化する可能性があります。

共同相続人全員に“一歩引いて相手を思いやる気持ち”があるといいのではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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