情報に翻弄されず何が大切かを考える

先日相談を受けたMさん、嫁いだ娘さんが1人いますが、配偶者に先立たれて現在1人で生活をしているとのことです。

Mさんの最大の関心ごとは、現在住んでいる家をどうするか、でした。

最初のやり取りは以下のようなものでした。

 

Mさん:「私がいなくなった後、この家をどうしようかと、そればかりが気になって」

私   :「どうしたいと思っているのですか」

Mさん:「私が元気なうちに売ってしまおうかと」

私    :「娘さんとはお話ししたのですか」

Mさん:「娘は継ぐと言っています」

私   :「娘さんが継ぐことに何か問題はありますか」

Mさん:「継いでも管理できないのではないかと思います」

私   :「その件に関して娘さんとお話ししましたか」

Mさん:「そこまで話していないけれど、今は空き家が問題になっているでしょう、

売った方がいいと言っているし・・・」

私   :「娘さんはこの家で生まれ育ったのですよね」

Mさん:「はい、そうです」

私  :「子ども側から言えば、生まれ育った家というものには思い入れがあるのでは

ないでしょうか」

Mさん:「そうですね、想い出がいっぱいあるでしょうから・・・」

Mさん:「娘ともっと話した方が良さそうですね」

私   :「それがいいと思います」

Mさんはテレビなどで空き家問題について出演している専門家等の話を聞いて、自分が元気なうちに売却してしまうのが一番いい方法だと思っていたようです。

確かに、負の遺産になってしまうくらいなら本人が生前に処分してしまうというのも方法の一つです。相続人がいないのであれば、かなりの確率でその方法が選ばれるかもしれません。

しかし、今回の場合は相続人(娘さん)がいて、その相続人(娘さん)の意向としては承継したいというものです。

それを無視して売却というのはいかがなものでしょうか。

また、Mさんに細かく尋ねたところ、売却によって生じる一時所得の所得税に関することや売却に伴って翌年の後期高齢者医療保険や介護保険の自己負担割合が増える可能性もあることなど、ほとんど考えていなかったようでした。というより、知りませんでした。

特に一時所得に関係する取得費の話などはまるっきり理解しておらず(通常は理解していないのが当たり前の話かもしれません)、購入時の書類があるかも不確かな状態でした。

結局、娘さんとよく話してみるということで、今回は決着し、それでも売却ということであればそれに関してはお受けする旨お伝えして、相談を終了しました。

今回のMさんのように、情報に翻弄されて、まず何が大切なのかということを見失ってしまうケースがあります。

我々相続士は、情報に翻弄された相談者や依頼者をより正しい方向へ方向修正するための支援も必要なのではないでしょうか。

相続という迷路に迷い込まないために。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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