成年後見人のずさんな処理と相続士の必要性

今回は辛口のコラムを一つ。

成年後見制度とは、判断能力が衰えた人の法律行為について保護をする制度でありますが、保護をする側の専門家の問題が数多く話題になったことはご存知のことと思います。

成年後見人等の保護者となって業務を行う専門家は後見業務等の報酬を得ることができます。その報酬を得るために成年後見人等の職に就けるよう働きかけているわけです。つまり、まず報酬ありきの考え方なのです、報酬を得るために家庭裁判所に提出しなければならない書類等をせっせと作成し、報酬を得るために周辺業務を機械的にこなしているのです。成年被後見人等を見ずに、その者の財産を見ているだけなのです。

確かに、成年被後見人等の介護等は業務に含まれず、財産管理等が業務になりますから、当たり前のことかもしれませんが、感情的には割り切れないものも出てきそうです、特にその専門家の対応によっては。全ての専門家がそうとは言いませんが、そういう専門家もどきに出くわす確率は非常に高いのではないかと考えます。

それとは逆に家族や親族が成年後見人等になった場合はどうでしょうか。それまでの介護の延長という感がぬぐいきれない状態で、成年被後見人等の面倒を看ていくのではないでしょうか。実際の法律行為の代理や家庭裁判所への報告など一般人にとっては大変なことだと思いますが、苦労しながらもこなして行き、報酬は二の次となることが多いのではないでしょうか。

報酬しか見ていない専門家は業務もずさんなケースが多く、成年被後見人等が亡くなって相続開始後相続人に財産の引き渡しを行う場合もずさんなケースがあります。

相続開始後に成年被後見人等の口座から預金を引き出しているにも関わらず、説明も領収書の写しも無く、単純に「預金残高は見てもらえればわかる通りこれだけです」といって通帳を渡して終了。

引き渡しを受ける者は素人ですから「はあ、そうですか、分かりました」となるのは当然です。金額を見ると相続税が発生する金額。それはその専門家も分かること。通帳には病院や施設、葬儀社などに支払ったメモ書きがされているような状態で、なぜ領収書の写しが渡されないのか。

また最後に成年後見人等の報酬が引き出されている、しかし、領収書の発行がない。そして、税金の口座振替に指定されているにも関わらず、その説明がない。相続の手続きをする際には遺産分割を始め相続税申告等に影響してくる内容であるにも関わらず知らん顔。知らん顔というよりおそらくそこまで考えていないか、考えが及ばないという方が正しいのかもしれません。

これは稀なケースなのかもしれませんが、事実であることも確かです。

こういう現実がある以上、そのずさんな専門家もどきに対処できる真の専門家が必要になってくるのではないかと考えます。

「相続士」は相続を遺産分割・相続税・不動産などトータルで把握して対応していく能力があるので、今後の活躍を期待される専門家の代表的存在であると思われます。ここに「終活」の知識を持ち合わせた「終活士」が合わされば尚ベターな存在となり得るのではないでしょうか。

今後は相続周辺業務にも長けた「相続士」の存在が必要となり、「相続士」と「終活士」のハイブリッドな存在である専門家の必要性が高まることとなるでしょう。

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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