相続開始前の相続権の主張は有効か

 

相続において相続権を主張できるのは相続人だけですが、その権利を相続開始前に主張できるものなのでしょうか。

相続することを前提に相続対策として「生前贈与」や「相続させる旨の遺言」を作成したりしますが、それは根底に被相続人となる者と相続人となる者の間で暗黙の了解があるから何の不自然もなく行われるのですが、このお互いの了解という意思疎通がなく、相続人となるであろう者が一方的に被相続人となる者、あるいは、他の相続人となり得る者に対して自分の権利を主張することは正当な権利の主張となるのか考えてみたいと思います。

我が国における相続においては法定相続主義が採用されていますので、誰が相続人になるかを勝手に決めることはできず、法律の規定に則るものとされています。みなさんもご存知の「法定相続人」です。法定相続人は配偶者相続人と血族相続人とがあり、血族相続人は相続人となる順位が決まっていますので、上位の者があるときは下位の者は相続人とはなりません。

また、「法定相続人」という言葉以外に「推定相続人」や「共同相続人」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

「推定相続人」というのは、個々の家族について相続が開始した場合に、その家族構成によって相続人となり得る人のことをいいます。

例えば、

Aさんの家族は配偶者と子供2人、この場合Aさんの相続に関して推定相続人となるのは配偶者と子供2人です。

Bさんの家族は配偶者だけで子供はいない、親もすでに他界しているが他にBさんの妹がいる、この場合Bさんの相続に関して推定相続人となるのは配偶者とBさんの妹になります。

この「推定相続人」は相続開始前は、あくまでも「『推定』相続人」なので、相続放棄や相続廃除・相続欠格などにより、相続開始時には相続人ではないかもしれません。また、兄弟姉妹の場合には「遺言」により相続権を剥奪されるかもしれません。そういう意味で『推定』なのです。

そして、相続放棄や相続廃除・相続欠格も無く、「遺言」による相続権の剥奪も無い状態で相続開始を迎えた場合に初めて「相続人」あるいは「共同相続人(相続人が複数人数いる場合)」となり被相続人の遺産について「相続」する権利を有することになるのです。

「相続開始前の相続権」について判例では以下のように判示されています。

「推定相続人は、被相続人の権利義務を包括的に承継すべき期待権を有するだけで、いまだ当然には個々の財産に対し権利を有するものではない。(最判昭30.12.26)」

冒頭の疑問に対する答えとして、相続開始前に推定相続人が相続権の主張をしても、それは正当な権利の主張とは言えない、ということです。

自分が相続人だと思っていても、軽はずみな言動は慎みたいものです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続・事業承継に特化した事務所を開設、同時に、相続支援ネットにメンバー加入。「円満な相続」をモットーに、遺産分割対策支援・遺産分割協議支援など相続・事業承継支援を行う遺産分割に特化した相続士。あらゆる層の相続において問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応には定評がある。日本相続士協会理事、日本相続士協会試験委員、相続士上級養成スクール専任講師。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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