法律の規定を無視して円満相続?

相続においては様々な要因によって様々な問題が発生し得ます。個々の家族によって全く違う様相を呈する相続は、法律の考え方だけで問題解決に至るのでしょうか。

ある法律の専門家はこう言います、「寄与分は認められないから、ダメですね。」

寄与分の主張をバッサリと切り捨ててしまう文句です。確かに、寄与分は審判等の争いになった時に寄与分の認定要件が厳しくて難しいというのはあるかもしれません。特に高いハードルとなり得るのは「特別の寄与」です。「特別の寄与」と認められるような寄与行為の有無が争点となることが多いのでしょう。調停や審判の場に立ち会う専門家だからこそ分かる「調停・審判における寄与分認定の難しさ」というのもあると思います。

だからと言って、「寄与分は認められないから、ダメですね。」とバッサリ切り捨ててしまうのはどうかと思います。

寄与分の認定が難しいのであれば、どうすれば他の相続人に認めて貰えるのかを相談者と一緒に考えたり、調停などになりそうなのであれば、少しでも認めて貰うにはどのような準備が必要なのか、など、もう少し相談者に寄り添う姿勢も必要かと思います。法律の現場を知っている専門家だからこそ切り捨てるのではなく、救う姿勢を見せて貰いたいものです。

寄与分で例示してみましたが、法律の現場ではどう考えるかということだけでは根本的な問題解決には至らないケースが多いようです。家庭裁裁判所での調停・審判の件数が多いのも頷けます。

また、法律の考え方といえば代表的なものが法定相続分です。

法定相続分どおりに分けるのが一番平等だと主張する人もいます。しかし、被相続人との関わり方や相続開始後にすぐに行わなければならない様々なことに関わっているのか否かによって、本当に法定相続分どおりが平等なのか、という問題が出てきます。法定相続分という法律の規定をダイレクトに主張する相続人と法定相続分どおりにはいかないと考える相続人と、この微妙な考え方の違いが遺産分割協議のときに争いの火種となることがあります。

法定相続分を踏まえながらも、若干の修正を加えていかないと共同相続人全員の納得を得ることは難しいケースが多々あるのも事実です。

相続においては法律の考え方を直接そのまま適用しようとしても、それだけではうまく収まらないのが現実です。相続人それぞれの感情の機微によって遺産分割協議は変動してしまいますので、そこをうまく収めないと円満解決の方向には進んでいきません。

法律の専門家はとかく法律の条文どおりに考えたり話したりしますが、人の気持ちの収束も考えていく必要があると思います。相続の現場を法律闘争の場にしてはいけないと思います。

しかし、ケースによっては法律の専門家に頼らなければならないこともありますので、専門家選びには慎重をきたす必要があります。相続においては、他の専門家と提携をしているような人を探すか、或いは他の専門家からの紹介等を利用するのも良いかと思います。

相続においては、民法の規定が基準となりますが、共同相続人全員の平和的合意があれば民法の基準は無視しても構わないのです。

それはすなわち円満な遺産分割を意味するからです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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