「共有は平等」という『勘違い』がもたらすものは?

相続手続きの中で一番大変なのが遺産分割です、遺産を誰にどのように分配するかを共同相続人全員で話し合って決める作業です。

そして、この遺産の中に不動産がある場合には、不動産を共同相続人の人数分に切り分けることができないので、不動産を誰が承継するかという問題が浮上してきます。

家督相続の考えを引き継いでいるような家族で、長男が承継するということが暗黙の了解として決まっているような場合は、それを前提にして話し合いを進めていくことになりますから、比較的話がまとまり易いかもしれません。簡単でない場合もありますが、、、。

長男が承継するという暗黙の了解のない家族などでは、不動産の扱いに困るケースが多々あります。

困った共同相続人が選択しがちなのが、「共有」という選択肢です。そしてもっともらしい理由付けをしてしまいます、「みんなで所有するのが一番平等だから」と。

果たして、この「不動産の共有」は平等な遺産分割なのでしょうか。

そもそも遺産分割というのは、相続開始時に被相続人の所有する財産が共同相続人全員の共有となっている状態を解消し、各々の遺産の帰属先を決める作業なのです。その帰属先を決めるための話し合いが遺産分割協議なのです。

つまり、遺産分割協議の結果が「共有」というのは遺産分割自体が完了していないのと同じ状態なのです。そこに「平等」という言葉をつけて納得してしまっているのです。

では、この「共有」がこの先どのようなリスクを孕んでいるのでしょうか。

最初の「共有」は親子、兄弟姉妹の共有となっていると思いますが、その共有者の中で次の相続が開始したとき、例えば共有者の一人である長男がなくなったとき、その長男に配偶者や子がいたとしたら、長男の共有持分は長男の配偶者や子が承継することになります。

ここで、配偶者とはいえ血縁でいうと他人が共有者の中に入ってきます。同じようなことが繰り返されれば、また共有者の中に他人が入ってきて、元々は親子兄弟姉妹の共有だったものが他人同士の共有に変わってしまいます、それも多数の共有者に。

こうなると、仮に不動産を売却しようにも全員の同意を得ることが難しくなり、誰も住んでいない家だったとしても手をつけることができずに「放置」ということにもなりかねません。

その結果、今社会的に問題となっている「空き家」になったり、共有となっている不動産を巡って争いになったり(管理や管理費の負担という問題もあります)します。また、「空き家」となり、管理が不十分だったりすると近隣へ損害を与えた場合には賠償問題に発展することもあります。

その他、最初の親子兄弟姉妹の共有状態であっても、何らかの事情の変化によってトラブルに発展する可能性もあります。

いかがでしょうか、「共有は平等」という勘違いから、とんでもない事態に発展してしまう可能性があるわけです。

共有のリスクについてしっかりと理解し、相続開始前であればその対策を考え実行し、相続開始後であれば共有以外の方法を考えたいものです。

相続の専門家の利用も一考の余地有りかと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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