財産管理委任契約・見守り契約について

認知症など判断能力が低下した場合に利用できる制度として成年後見制度があり、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。

「法定後見制度」は直ぐに保護を必要とする人が家庭裁判所に申し立てを行い成年後見人等の保護者を選任してもらう制度です。

「任意後見制度」は本人の判断能力が十分なうちに、判断能力が不十分になったときに自分の代わりに法律行為をしてもらう人(任意後見人となる人)を決めて予め契約(任意後見契約)しておき、判断能力が不十分になったときに家庭裁判所に「任意後見監督人」の申し立てをして、「任意後見監督人」選任後、契約の効力を発生させるものです。

「任意後見契約」の中に、任意後見人に代理権を与えるための「代理権目録」を作成し、本人に代わって本人のための法律行為を行うことができるようにします。例えば、金融機関での預貯金の入出金や介護施設等の入所契約など、本来であれば本人が行うべき行為を判断能力が不十分になった本人に代わって任意後見人が行うことができるのです。

しかし、これも任意後見契約の効力が発生しなければ、本人に代わって行うことはできません。

もし、本人の判断能力が十分なままで、任意後見契約が使えない状態で、何らかの理由で入院や施設への入所となってしまった場合にはどうなるでしょうか。また、任意後見契約を締結しても本人の判断能力が不十分な状態になったことをどうやって知ることができるのでしょうか。

単純に任意後見契約をしておけば大丈夫というわけではないということです。

任意後見契約の中でも「移行型」という契約方式で、任意後見契約の効力が発生するまでの間は「財産管理委任契約」という事務委任契約を結んでおくものがあります。

この「財産管理委任契約」というのは、簡単にいうと本人の判断能力は十分であっても自分の財産を管理したりするのが大変な状況にある人が、自分の財産の管理を自分が選んだ受任者(任意後見契約受任者と同一人物が良いでしょう)と契約をして任せるというものです。受任者に何を任せるのかは代理権目録を作成して契約内容としますが、このまま本人の判断能力が不十分になったときには任意後見契約に移行するという契約方式を取ることが「任意後見契約移行型」というものです。

任意後見契約の効力を発生させる必要がないときには「財産管理委任契約」に基づいて受任者が本人の監督のもと本人の財産を管理していきます。

任意後見契約の効力を発生させるための最初の判断は「本人の判断能力が不十分になったとき」ですが、これをいつ判断するのか、本人の状況を一定の間隔で看ていかなければなりません。これをきっちりやるためのものが「見守り契約」です。

「見守り契約」は受任が本人の状況を毎月1回訪問や電話なので確認していき、任意後見契約の必要の有無を判断していきます。

「財産管理委任契約」の問題点の一つとして、受任者が任意後見契約に移行せずに財産管理委任契約のまま事務委任を継続してしまうということが挙げられます。この場合、財産管理委任契約時には本人が監督者でありましたが、本人の判断能力が不十分になり財産管理委任契約の監督をすることができなくなり監督者不在(監督機能が果たせていない)というのが問題となるのです。

受任者はそのつもりがなくても他から見たら預かった財産を流用しているのではないかと疑われてしまうかもしれません、あるいは、実際にそういう事件もあるかもしれません。

ここに「見守り契約」の役割があります。

この場合、「見守り契約」の受任者は「財産管理委任契約」の受任者とは別の者が良いでしょう。

「見守り契約」の受任者が「必要」と判断した場合には「財産管理委任契約」から「任意後見契約」に移行して、「本人を保護する」と同時に「財産管理委任契約の受任者」も守るという結果に繋がります。

少子高齢化社会となった今では、「相続人や親族と縁遠い人」やいわゆる「おひとり様」となる人がだんだん増えていきます。

こういう制度を上手く利用していくのも必要かもしれません。

相続のみならずその周辺知識や実務に長けたハイブリッドな専門家にご相談ください。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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