遺言の代わり? 死因贈与契約

自分の死後に自分の財産を自分で決めた人に贈与する方法としては遺言が代表的な方法でありますが、なかには遺言というものに拒否反応を示す人、手続きを面倒と思い嫌がる人、何らかの理由で遺言を作成できない人・したくない人など様々な理由で遺言を作成しない人たちがいらっしゃいます。

では、そのような人たちは自分の財産の行方を決めておくことはできないのでしょうか。

遺言以外にも方法は有ります。

死因贈与契約という方法です。

死因贈与契約とは、贈与者の生前に受贈者と契約を締結し、贈与者の死亡によって効力を生じる契約のことをいいます。贈与者の死亡により効力を生じることになることは遺贈と共通していますので、その性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用されると民法に規定されています。

遺贈に関する規定が準用されるといっても全てではなく、遺言の効力に関する規定、遺言の執行に関する規定、遺言の撤回に関する規定が準用され、遺言能力、遺言の方式、遺言の承認・放棄に関する規定は準用されません。

遺贈は相続開始(遺言者の死亡)によって効力が生じ、死因贈与契約も相続開始(贈与者の死亡)によって効力が生じるというということは、遺贈も死因贈与も同じ?という単純な疑問が生じますが、以下のような違いがあります。

死因贈与契約は遺言のような厳格な方式を求められていないので、自筆証書遺言のような全文自筆要件や公正証書を作成する際の証人立会い要件は不要となります。

その他、遺言は意思能力があれば15歳に達していれば作成可能ですが、死因贈与契約は20歳に達していなければ契約できません。また、遺贈は法律的には単独行為とされ受遺者の承諾は不要ですが、死因贈与契約は文字通り契約ですから受贈者の承諾が必要となります。

このように方式等の違いはありますが、贈与者(遺言者)の死亡後に受贈者(受遺者)が財産の贈与を受けるという効力については死因贈与も遺贈も変わりありませんので、ケースによっては遺言作成ではなく死因贈与契約を選択することも一つの方法かと思います。

遺言作成時に必要となる手続負担を回避したい場合、どの財産を誰に贈与するか生前に明確にして契約しておく場合、不動産のみの贈与を予定していて特定遺贈ではなく死因贈与を選択して仮登記をして贈与を確定しておく場合など死因贈与契約を選択するケースが考えられます。

死因贈与契約を選択するのはおそらく遺言でいえば包括遺贈または特定遺贈の対象となる場合ではないかと思います。この場合、受贈者は相続人以外の第三者である可能性が高いので包括遺贈や特定遺贈と同様に執行者を定めておく必要があります。執行者の定めがないと受贈者は相続人の協力を得て死因贈与契約の執行をしなければならなくなるので受贈者の負担が重くなる可能性が高くなります。

また、死因贈与契約は税務面でも相続との相違がありますのであらかじめ確認しておく必要があります。

遺言を作成するか、死因贈与契約をするか、ケースバイケースで考えればいいことで、あくまでも引き出しの一つとして押さえておけば良いと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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