相続対策…優先順位は?

 

相続開始前の準備ということで相続対策と名を打って様々な方法が世に出回りそれを勧める記事等が多数見受けられますが、勧められるままにその方法に飛びついても良いのでしょうか。

相続対策として遺言や相続税の節税対策がよく話題として挙がりますが、遺言も漫然と作成したのでは意味をなさないものになりかねないどころかトラブルの元にもなりかねません、また、相続税の節税対策も相続税を低く抑えられるからという誘惑だけで(他への影響も考えずに)行なってしまうと後々大変なことになりかねません。

例えば、相続対策という名目で現在一箇所に2棟建っているアパートを1棟の賃貸マンションに建て替えるというように、相続税の節税効果(この場合借金というマイナス財産を作るという方法)を目的として行なっても、相続開始後の遺産分割協議において相続人の間でこの1棟のマンションをどうするのか問題が発生したり、そもそも本人が長生きして借金というマイナス財産自体が少なくなり思ったほどの効果が上がらないばかりか分割するのがより難しい不動産に変えてしまったなど、相続税の節税にしか目がいかずに、他のリスクを考えなかったばかりに相続開始時には問題だけが残ってしまったなんてこともあり得ます。この問題には今社会問題となっている空き家リスクも含まれることになるでしょう。

相続税の節税対策は相続対策の一つではありますが、それが全てではありませんし最優先課題であるとも言い難いです、もっと他にも目を向ける必要がります。

相続で問題となるのは何でしょうか、何が問題で世間で良く言われている争族となってしまうのでしょうか。

その根本的原因は「遺産の分け方」にあります。

誰がどの遺産を取得するのか、誰がいくら取得するのか、共同相続人の間では最も関心の高い事柄となります。

この共同相続人の間で最も関心の高い事柄である「遺産の分け方」の問題を解決すればそれ以外のことは意外とスムーズにいくことが多いようです。

では、ここで今回のテーマである相続対策の優先順位についてお話ししたいと思います。

まず第1に考えなければならないことは財産の分割(遺産分割)についてです。

どのような財産が遺産となるのか、そしてその財産は公平性を保って相続人で分割することはできるのか、揉めることはないのか、揉めるとしらどのような問題があるのか、その解決方法は何か、というようなことを遺産の対象となる現財産について検討する必要があります。おそらくこれが一番の難題になるのではないかと思われます。

この問題がクリアできたら次に考えるのが相続税の問題ですが、相続税の問題には納税問題と減税問題があります。

筆者が考えではほぼ平行して2つの問題を考えて行きますが、最初に考え始めるのは納税問題が先です。現在の財産を残した場合にどれくらいの相続税が発生するのか、その相続税を払うことができるのか、払うために準備(納税資金の準備)する方策はあるのか、と検討していきながら、節税はできるのか、あるとしたらその方法は何か、というように考えていくべきだと思います。

先述した「例え」のように遺産分割を飛ばして節税対策から入ってしまうと最大の問題を残しながらその解決の糸口を、簡単にほどける糸あったにもかかわらず複雑に絡めあった糸にしてしまうように、解決困難なものにしてしまう可能性も十分にあります。

相続対策と一口で言っても様々なものがあります。

順番を間違えないように着実に進めていきたいものです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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