生前贈与…よく考えて!

最近の相続対策としてよく取り上げられるものの一つに「生前贈与」があります。生前贈与を行う上では税制上の特例を上手く利用したり、暦年贈与や相続時精算課税制度を上手く利用する方法がオーソドックスな考え方です。

Aさんは、父親の相続で承継したアパートを母親と2分の1の割合で保有していましたが、そのアパートの老朽化が酷く維持費も馬鹿にならないため売却し、Aさんが住むための戸建てを新たに購入することにしました。

その際、売却代金の2分の1(母親持分)の贈与(現金の生前贈与)を受けたのですが、これを「直系尊属から住宅取得投資金の贈与を受けた場合の非課税特例」を利用し、非課税限度額を超えた部分だけ「相続時精算課税制度」を利用しました。不動産を売却することによって翌年の社会保険料や市都民税が一時的に上がってしまうというデメリットはありますが、制度を上手く利用できて良かったと満足されているようです。

Aさんもご自身で色々調べてはいたようですが、どのように制度を利用したらいいのか、漠然としてしまいまとまりがつかなかったようです。

制度を利用した生前贈与が上手くいった例の一つと言えるのではないでしょうか。

 

Bさんは、子供のいない伯父さんから不動産の贈与を受ける予定です。Bさんの伯父さんは不動産屋さんで贈与の説明を受けており、また、ご自身でも兄弟の相続において不動産を承継し司法書士によって移転登記を受けたばかりです。Bさんの伯父さんは不動産屋さんで贈与税がかかる旨説明を受けたにも関わらず、兄弟の相続において不動産を承継した時に無税だったため(相続税の基礎控除内で済んだと思われます)贈与と相続を同じものと勘違いをしてしまい、Bさんに不動産を贈与しても親族なら無税だと思い込んでしまったようです。

Bさんは贈与を受ける場合に贈与税はどうなるのか、名義変更をしたときの費用はどうなるのか、暗中模索の中、伯父さんの不動産の登記をした司法書士のところに行きましたが、Bさんが明確になったのは登記手数料のことだけだったようです。

Bさんは暗中模索の中、誰に相談すればいいのか、藁をも掴む気持ちではなかったでしょうか。

このケースの場合、伯父さんとBさんの関係では贈与税を計算する上で特例税率には該当しないので、一般税率となると思われますからそこそこの贈与税額となる見込みです。

Bさんは生前贈与を受けるのか、断るのか、それとも何かいい方法があるのか。

Bさんの決断は果たして、、、。

 

贈与税を考えての生前贈与では、毎年少しずつ贈与をしていく暦年贈与がよく言われる方法の一つですが、暦年贈与のように計画的に行なえれば良いのですが、そうでないケースもあります。

少子高齢化が進む中、自分の財産を承継する直系卑属がいないという人は以前に比べ増えてきていますし、今後の増える可能性はあります。その場合、「財産の贈与」というものが暦年贈与や相続時精算課税制度の利用だけでは対応しきれなくなります。

贈与の方法も贈与者と受贈者の関係、あるいは、贈与する財産の性質によって柔軟に考えていかなければならなくなるでしょう。

相続対策としての生前贈与、本当にそれでいいのか、贈与する側も贈与を受ける側もよく考えてから実行してください。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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