成年後見人と任意後見人

最高裁は、成年後見制度における法定後見制度の後見人の選任について基本的な考え方として、「後見人にふさわしい親族など身近な支援者がいる場合には、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましい」との考えを示しました。

後見人の交代に関しても不祥事など限定的な許可要件を改めて柔軟に交代や追加選任をすることが可能となるようです。

いきなり小難しい話から入りましたが、まず成年後見制度について簡単におさらいしておきたいと思います。

成年後見制度とは、認知症などで判断能力に問題がある(十分でない)人の支援をする制度で、法定後見制度と任意後見制度があります。

冒頭の最高裁のお話は法定後見制度に関するお話で、家庭裁判所が選任する法定後見人について最高裁判所の考えを提示したものです。

認知症等によって本人の判断能力が不十分になったときに、その度合いにより、家庭裁判所に申立を行い、後見・保佐・補助のいずれかの類型の支援を受けることになります。今回のお話は後見ということでお話させて頂きます。

後見の審判申立を行うと諸々の手続きを経て、家庭裁判所より「成年後見人」が選出され後見事務を行うことになります。この「選出される後見人」がここ数年問題となっているのです。家庭裁判所から選出されるのは多くの場合、法律の専門家とされる弁護士や司法書士などですが、これらの専門家が保護の対象である成年被後見人(認知症等により判断応力を常に欠く状況の人で家庭裁判所の審判を受けた人)の財産の流用等を行なったというような不祥事があり問題視されていました。このような問題が継続していくと成年後見制度自体の問題にもなりますし、問題を起こすような専門家を選任したということで家庭裁判所の問題にもなりかねません。そこで今回の最高裁判所の考え方の提示となったのではないでしょうか。原点回帰とも言えるものです。

元来、認知症等により判断能力が不十分になった人を面倒看るのは家族・親族というのが本来の姿ではないかと思います。しかし、介護や相続の問題とは切り離すことのできない問題であり家族・親族間の争いの元となりやすく、また、親族が後見人になったとしても財産の使い込みなどの問題はあり得るでしょう。そういう問題を回避するための手段の一つとして専門家後見人の選任だったはずなのですが、不祥事が発生するようでは基本に戻らざるを得ないということかもしれません。

今まで一般の方が成年後見制度を知って理解する場が少なかったこともありますが、相談を受けた専門家が「家族や親族が後見人になり得ることとそのための手続きについて説明ができていない」という事にも問題があったのかもしれません。

昨今の「終活ブーム(?)」で様々な専門家が世に排出されていますが、相続開始直前の混沌とした終末期に関する対応方法について、しっかりとマネジメントできる専門家はどれだけいるのでしょうか、疑問です。

最後に、では家族・親族がいない人(いわゆるおひとり様)、あるいは親族関係が遠い人などはどうすればいいのか。法定後見制度の利用となれば、今までどおり家庭裁判所が法律の専門家などから選任する事になりますが、もう一つの方法があります。

法定後見制度と並ぶもう一つの柱である任意後見制度です。

任意後見制度は自分の万が一に備えて、自分の後見人になる人(任意後見人となる人)をあらかじめ自分で決めて契約をしておくとおいうものです。見ず知らずの人に自分の財産を管理してもらう事を嫌う人もいます。嫌うまでいかなくても制度を理解すると任意後見制度を選択するという人も増えてきました。

現状、統計上は任意後見制度の利用状況はかなり低いです。しかし、制度の普及自体が遅れていることと対応できる専門家の不足も理由にあるのではないかと思います。

成年後見制度自体が一般の方には馴染みにくい難しい制度であるのかもしれません、まず最初に、相続開始直前の混沌とした終末期に関する対応方法について、しっかりとマネジメントできる専門家を選ぶことが大切なのかもしれません。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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