数次相続、再転相続、相次相続控除、何これ?

相続と一口に言っても相続の開始状態によって色々な言い方が用いられます。民法上用いられているものもあればそうでないものもあり、実務上の用語の場合には専門家によって説明が違うなんてこともあり得ます。今回は雑学的な用語解説としてお話ししたいと思います。

まず基本的なところでは「代襲相続」という言葉があります。これは、被相続人の子が既に亡くなっていた場合に、その直系卑属である子が既に亡くなっている被相続人の子の相続分を承継するという制度です。これは一般的に多くある相続の形態ですからご存知の方も多いのではないでしょうか。

そして、代襲相続と関係してくるものに「同時死亡の推定」というものがあります。例えば、父と子が事故などで同時に亡くなった場合、この場合同時とはどちらが先に亡くなったか判定できない場合を言います、父と子の間ではお互いに相続は開始しないというものです。つまり、既に亡くなっていたものと同じ扱いになるということで、父の相続において子は既に亡くなっていたものと扱われ、子に直系卑属(父からみたら孫)がいれば代襲相続が発生します。

次に「数次相続」と「再転相続」ですが、これは実務上の名称となり、両者の区別はないという専門家もいますが、「数次相続」と「再転相続」には一つ大きな違いがあると解釈しています。

例えば、祖父・父・子のケースで考えます。祖父が亡くなり、間も無く父も亡くなり、祖父と父の相続に関して子が対応しなくてはならない場合、2つのケースが考えられます。祖父が亡くなった時に父が「祖父の相続に関して承認または放棄の意思表示をしていたケース」と「祖父の相続に関して承認または放棄の意思表示をしていないケース」です。前者のケースでは子は父の意思表示に従い祖父の相続について対応処理していかなければなりません。このケースを「数次相続」と言います。

それに対して後者のケースでは、父は意思表示をしていないので、祖父の相続に関して承認するか放棄するかを子が決めなければなりません。このケースを「再転相続」と言います。気を付けなければならないのは、承認と放棄の判断について「祖父の相続」と「父の相続」を関連付けて判断しなければならないということです。両方とも承認あるいは放棄であれば問題ありませんが、放棄と承認が混在する場合にはご注意下さい。

祖父の相続は放棄して父の相続は承認するということはできますが、祖父の相続は承認して父の相続は放棄するということはできません。

両者とも遺産分割協議書の作成では被相続人と相続人の複雑な関係(誰の相続で、誰が相続人なのか等)をしっかりと明記しなければなりませんのでご注意下さい。

最後に「相次相続控除」ですが、これは相続税法上の言葉です。相続開始前10年以内に被相続人が相続等により財産を取得したことにより相続税を課されていた場合に、その被相続人から相続等により財産を取得した者の相続税額から一定の額を控除するというものです。例えば、祖父から父への相続(一次相続)で相続税が課せられた場合に、一次相続から10年以内に父から子への相続(二次相続)で相続税が課せられるときは「相次相続控除」が適用可能とのことです。詳細は税理士さんにお尋ねください。

以上、小難しい相続の言葉についてお話ししてきましたが、これらの言葉を説明無しに乱発するような専門家は避けたほうが良いでしょう、分かりやすく説明してくれる、専門用語を使うにしても説明をしっかりしてくれる専門家を選ぶようにして下さい。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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