相続における平等公平…それぞれの立場

今年から改正相続法が段階的に施行されていきます。既に1月には「自筆証書遺言の方式緩和」が施行されています、7月からは「特別の寄与の制度」などが施行されます。

この「特別の寄与の制度」は被相続人の介護をした「相続人以外の親族」のための制度となるもので、今まで相続権(寄与分の請求権)の対象外であった「親の介護をした長男の嫁」などに「寄与料の請求権」を認めたもので、見方によっては「親の介護」という視点での「親族間の公平性」を図るものとも言えるのかもしれません。しかし、この制度も相続税の計算上では2割加算の対象となるようで、それに関して公平性が保たれていないという専門家も中に入るようです(個人的には、このようなことまで公平性を比較してしまうと話がまとまらないと思いますが)。

相続においてよく言われる「公平性」や「平等」というのは現実的なものなのでしょうか。

ある専門家は言います「遺言を作成する際には公平性や平等に配慮した内容にしましょう」、そして、ある相続人は言います「遺産を均等に分けよう、それが平等だから」と。

「公平性」や「平等」を意識し過ぎて「不動産の共有」などと時限爆弾(将来的に争いの元となるか、どうにもならない問題となり得る)のようなものにしてしまう家族もあります、「みんなで共有にするのが平等だから」と。

では、相続において「公平」や「平等」というものは存在しないのか、という問題になりますが、「完全な公平や平等」は高い確率で有り得ないと思います。

なぜなら、相続人は各々で公平や平等の価値観が違い完全に一致させることは困難であること、相続人にはそれぞれの生活が有りそれによって被相続人との関係性が否応なしに違いが生じてくるので「親の面倒を看る」という視点では必ずと言って良いほど「差異が生じる」こと、相続人それぞれのここまでの歴史とそれにまつわる想い、などが有りますので「完全な公平や平等」という結果には繋がりづらいのだと思います。

相続人それぞれの立場という視点で考察すると、長男、二男、長女、二女など様々な立場があり、それぞれ幼少からの歴史があり、そこにそれぞれの想いがあります。長男や長女と二男や二女というように、兄弟姉妹関係でも上の者と下の者では感情論的には違うものがあるでしょう。そして、相続開始時でのそれぞれの生活環境や親との接点も違いが出てきます、長男だから長女だからといっても必ずしも親の面倒を看るとは限らず、二男や二女が面倒を看ることもあるでしょう。このような場合には親の面倒を看ている二男や二女の感情に波紋が起こることもあります。長男の立場と二男の立場、長女の立場と二女の立場、それぞれの生活、様々な要因が交錯した状態で「相続」というものに向き合うことになります。

相続と向き合ったとき、権利の主張という「つば迫り合い」では必ずぶつかります、しかし、「お互いに譲り合う気持ち」があれば『お互いが納得できる合致点』とでもいうものを見出せるかもしれません。

例えば、冒頭で触れた「親の介護をした者」あるいは「その家族である相続人」には一定量の相続分を認めるという「許容」というものも必要になるのではないでしょうか。

「奪い合えば足りないが、譲り合えば余る」と言った人がいます。確かにその通りだと思います。

もしかしたら、「うちの相続は公平平等にできたから円満に終わったよ」という人もいるかもしれません、そのような相続では『お互いが納得できる合致点』というものを早い段階で見出せていたか、そのための準備がしっかり出来ていたのでしょう。

相続の現場では相続人各々の感情がぶつかり合います、権利の主張だけではなく(権利の主張には義務も伴うことを認識して)「許容」の気持ちも持って話し合いをして頂ければ『円満相続』への道が開けるのではないでしょうか。

また、そのための準備も可能であれば行なっておきたいものです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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