遺言執行者の指定は必要か?

 遺言作成時に漏れがちなものに「遺言執行者の指定」があります。公正証書遺言であれば公証人がアドバイスをして遺言執行者を指定することもあると思いますが、自筆証書遺言で遺言者が自分の判断だけで単独作成した場合などは指定漏れが発生し易いと思います。

そもそも一般の方は遺言執行者というもの自体を知らないというのが普通だと思いますが、専門家に相談し作成依頼をした場合は、しっかりした専門家であれば「遺言執行者の指定」を行うように案文を作成すると思います。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きを行う者のことをいい、未成年者もしくは破産者でなければ誰でも遺言執行者になることができますので、相続人が遺言執行者として指定を受けて、遺言執行実務を行うことも可能ですし、第三者である専門家が遺言執行者の指定を受けることも可能となります。

しかし、「遺言執行者の指定」の必要性を認識せずに指定を行わない遺言が多数作成されてきたことも事実です。これは、遺言執行者の権限等が明確でなかったことや、遺言自体の必要性が世間一般にあまり浸透されていなかったことなどが原因であるようにも思われますが、ここ数年で遺言の必要性は理解され世間一般に浸透してきていますし、今回の民法改正のより遺言執行者の立場や権限が以前より明確にされました。

では、「遺言執行者の指定」は必要なのか、という問題を検討してみます。

遺言の内容が「認知」や「廃除」など、「遺言執行者の指定」が法律要件になっているものもありますが、法律要件になっていないものは遺言執行者を指定するか否かは自由です。

遺言執行者の指定のない遺言は、遺言において相続分の指定を受けている相続人全員で、また、相続人以外の者が受遺者となる場合には受遺者と相続人が共同で遺言の内容を実現するというのが原則となります。

遺言執行者がいる場合には、遺言執行者が遺言の内容を実現するための手続きを行い、相続人は遺言執行を妨害するような行為を行うことができません、つまり、相続人は遺言執行業務が完了するまで遺産に手を出すことができないということになります。

そして、今回の民法改正により遺言執行者の権限が明確にされたことにより、特定財産承継遺言がなされた場合、金融機関への手続きがよりスムーズになったことと、今回の改正による重要ポイントともいえますが、遺言執行者が対抗要件を具備する行為が可能となったことが今まで以上に「遺言執行者の指定」の必要性を上げているのではないでしょうか。

遺言作成時に遺言執行時のことまで考えている方は、一般の方ではほとんどいないと思いますが、専門家に相談することで、その必要性(遺言執行まで考えた遺言作成の必要性)を認識することができ、より良い内容の遺言を作成することもでき、その専門家を遺言執行者に指定することもできます。

遺言執行自体が煩雑な手続きとなる可能性がありますので、遺言執行者として専門家に依頼するという選択肢も併せ持っておいた方が良いでしょう。

遺言作成時には、「遺言事項」・「付言事項」とともに「遺言執行者の指定」も検討するべきだと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続・事業承継に特化した事務所を開設、同時に、相続支援ネットにメンバー加入。「円満な相続」をモットーに、遺産分割対策支援・遺産分割協議支援など相続・事業承継支援を行う遺産分割に特化した相続士。あらゆる層の相続において問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応には定評がある。日本相続士協会理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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