「人生会議」に関する考察

 「人生会議」とは、厚生労働省が推奨する取組で、人生の最終段階の終末期にどのような医療やケアを受けるかを事前に考え、家族や医師などと話し合い共有する「ACP:アドバンス・ケア・プランニング」の愛称です。

昨年、厚生労働省が「人生会議」の言葉と考え方の普及のために某タレントを起用したポスターを発表しました、しかし、その様相が一部団体やSNS等で批判を受け、即日当該ポスターの使用中止となりましたが、それが逆に功を奏したとでもいいましょうか、違った意味で宣伝効果となり、「人生会議」という言葉が広まりました。この騒ぎと共に「人生会議」という言葉を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。

 「人生会議」の内容としては、自分の考えが伝えられなくなったときに医療やケアについてどうするかなど、終末期における希望や考えを家族や医療関係者との話し合いを通じてまとめていくことがメインとなります。

 終活の一環としてエンディングノートに終末期医療の意思表示として治療に関する希望や考えを書いたりしますが、これは医療に関する「事前指示書(AD:アドバンス・ディレクティブ)」であり、ある意味一方的な意思表示であるとも言えます。本人が書き記し、家族がそれをみて本人の希望や考えを知る、あるいは、確認し実行するという形です。なかには、書き記しながら家族と話すケースもあると思いますが、「事前指示書(AD:アドバンス・ディレクティブ)は、事前に希望や考えを書き記すこと(事前指示)であり、基本的には書く本人の単独行為となることが多いものです。

それに対して、「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」は、自分の価値観や望む治療・ケアを家族や医療関係者と「繰り返し話して共有しておくこと」であり、本人・家族と医療関係者の共同行為となり、「話をする」ということが中心となります。

両者の違いは、時系列でみた段階的な違いであるともいえます。

まだ元気なうちに「もしも」に備えて、「万が一自分がこういう状況になったら」の希望や考えを予め書き記しておく行為が「事前指示書(AD:アドバンス・ディレクティブ)」であり、具体的な疾病等により治療・ケアを受ける段階になって、症状や治療・ケア方針等を聞いた上で家族や医療関係者と話をしていくのが「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」ではないでしょうか。

ですから、どちらかという選択ではなく、時期や段階によって両方を考えていかなければならないものだと思います。

具体的な疾病等による「人生会議」をする間も無く急に重篤な状態になってしまうということもあり得ますので、「人生会議」を前提として「事前指示書」を省略することは得策ではありません、また、「事前指示書」を書き記していたとしても疾病等の種類や治療・ケアの方法等によって、考えや希望が変わるかもしれませんので「人生会議」も必要になってくるでしょう。

 死を連想させるということで、なかなか受け入れづらいことでもありますが、本人や家族にとって大事なことでもありますから、その段階に至っていなくても、そのときに備えて家族で繰り返し話をしておきたいものです、そのきっかけが「人生会議」というキーワードなのかもしれません。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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