空き家問題と相続士

 相続士の皆さんが相続業務を行なう際、或いは、相続業務に係る相談等を受ける際、不動産が関係してくることは当然のことと思いますが、その不動産が「空き家」となっていた場合や「空き家」となる可能性がある場合などがあると思います。

 ここで「この空き家をどうするか」、という問題に当たります。

「空き家」の対処方法としては大きく分けて2つになります。「売却」または「利用」です。

「売却」する場合には、当該不動産の状況等を勘案して行なわなければならないので、宅建業者である相続士の方は専門分野なので問題なく進めていいけると思いますが、宅建業者ではない相続士の方は宅建業者と協力して行なわなければなりませんが、その際注意したいのは、専門外だからといって丸投げにしないことです。ご依頼者は相続士であるあなたを信頼して業務を依頼しているのですから、あなたが連れてきた宅建業者のことをあなたを通して信用することになるので、随時宅建業者と連絡を取りながらご依頼者をフォローしていくことが大切になります。

 また、「売却」に関しては、修繕・リフォーム等の手を加えて行なう場合のあると思いますが、その際に「安心R住宅制度」を把握しておくことをお勧めします。

「安心R住宅制度」とは、中古住宅の“不安・汚い・わからない”という従来のマイナスイメージを払拭し、“住みたい・買いたい”既存住宅を選択できるようにするため、耐震性があり、インスペクション(建物状況調査等)が行なわれた住宅であって、リフォーム等について情報提供が行なわれる既存住宅に対して、「安心R住宅」という国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認める制度です。

売却するために敢えてお金をかけて修繕・リフォーム等をするのであれば、売却しやすいに越したことはありません。

 もう一つの「利用」に関しては、もう少し細分化され、「住宅としての利用」と「非住宅としての利用」があります。

「住宅としての利用」は修繕・リフォーム等をして、相続人等が住み続ける場合と、賃貸として利用する場合があります。

賃貸として利用する場合には、「新・住宅セーフティネット」も視野に入れておくことも必要なのかもしれません。

 一般に高齢者等は事故やトラブルの可能性を秘めているという貸主の不安から入居を拒まれやすい状況にありますが、高齢者や低額所得者などの住宅セーフティネット法で規定された「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県等に登録することで、登録住宅の改修費の融資を受けられたり(一定の条件を満たす必要あり)、「住宅確保要配慮者」のマッチング支援等が行なわれたりする制度です。

「新・住宅セーフティネット」を利用することで賃貸の空室リスクを低く抑える可能性もあります。

 最後に、「非住宅としての利用」についてですが、建築基準法の改正により、延べ面積200㎡未満かつ階数3階以下の戸建て住宅等を他の用途に転用する場合、今までは3階建てでは壁・柱等を耐火構造とする改修が必要であったところ、耐火構造とする改修は不要となります、ただし、宿泊施設や福祉施設に用途変更する場合には、宿泊者・利用者等が迅速に避難するための措置を講ずることが前提となります。

 このように空き家を取り巻く環境下では、制度の法律の整備や合理化等が行なわれてきていますが、不動産ということには変わりありませんので、その不動産をどのようにするか、基本的な視点は「相続士資格の基本である『相続士テキスト(2023年度版)』」の内容にあります。

もう一度テキストの基本内容に戻って確認し、実務に活かして頂きたいと思います。

 相続士には活躍する大きなフィールドがあります。

核となる相続分野のみならずそれ係るライフエンディング・ステージ、そして空き家問題。

考え方一つでビジネスフィールドを広げることも可能ではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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