おひとり様・おふたり様の相続と終活

 相続を考える上で、家族がいない、自分の後継者(自分が亡くなった後、権利・財産等を引き継ぐ者)がいないなどの場合、その人を「おひとり様」と表現することがあります。

 更には、子供等の直系卑属がいない夫婦ふたりの場合、どちらか片方が先に亡くなった場合、

遺された片方はひとりになってしまうため、このような夫婦を「おふたり様」と表現することがあります。

 このような「おひとり様・おふたり様」の相続に関しては、自分の権利・財産を自分の死後どうするのかを考えて準備しておかなければ、他人の手を煩わせることになります。

 一般的、健康な人の場合は自分の死後の準備についてあまり深く考えないのが普通なのかもしれません。そして、ある程度の高齢になったときには何をすれば良いのか考えも付かず、誰に相談すれば良いのか分からず、そうこうしているうちに認知症なってしまったり、認知症とまではいかなくても脳の機能は年齢とともに衰えていきますので、そのまま何もせずに死期を迎えることになってしまうのではないかと思われます。

 自分の死後の準備を何もしなかった結果、預貯金を数千万円遺して他界してしまったとか、自分のお墓はもとより親のお墓も放置した状態で他界してしまったなど、世間でよくある話になってしまうのです。

 直系卑属である子や孫がいれば死後の処理をしてくれるでしょうが、親戚縁者がいなくて完全にひとりである、あるいは、親戚縁者がいても縁遠く自分の死後のことを頼むことができない、などの場合には自分の老後(しかも死期に近い晩年を想定して)のことや死後のことを考えて、準備をしておきたいものです。

 では、「おひとり様・おふたり様」の相続や終活はどのような準備をしておけば良いのでしょうか、「おひとり様・おふたり様の相続と終活」について考えてみたいと思います。

 まずは、自分の老後について、死期に近い晩年も想定しての準備です。

認知症の問題を含めて介護の問題を考えておかなければなんりません。自分で本を購入して読んだりする方もいるかもしれませんが、重要なのはそこから実行に移すということです。

認知症を含めた介護の問題は、専門家に相談するという方法もありますが、地域にある地域包括支援センター等に相談するというのも選択肢の一つです。ただ、地域包括支援センター等は施設や病院等の紹介がメインになることもありますので、終活の専門家の相談しながら、施設や病院等を検討する際に地域包括支援センターに相談する、という流れも良いのかもしれません。

 その他、地域に民生委員の制度などもあるので、「おひとり様・おふたり様」の老後の心配事をどれだけ補ってもらえるのかを確認しておくのも良いかもしれません。

 また、介護・医療に関しては、訪問介護・訪問医療の制度を設けている施設・病院が近くにないか探しておき、検討しておくことも必要ではいかと思います。

 そして、晩年、自宅に住み続けられれば良いのですが、そうでない場合には施設の入居なども検討しなければならなくなります。このときに「おひとり様・おふたり様」の場合に問題となりがちなのが、保証人や施設からの後見人依頼の問題です。後見人依頼の問題は、万が一認知症になったときに困るので後見人になる人を決めておいてほしいという要請で、一般の人にはどうすれば良いのか分かりづらいという性質のものです。

 このような場合には、任意後見制度の利用が考えられます。まだ判断能力が落ちていない段階なので、自分で自分の後見人(任意後見人)になる人選んで契約をしておくのです。この契約をしておくことで前述した施設からの後見人の要請に応える形になり得ます(詳細は施設によって違いがあるので確認が必要になります)。このときに、可能であれば、後見人(任意後見人)となる人と遺言により自分の財産を贈与する(遺贈する)人とを同じ人(同一人物)しておくことがポイントとなります。

 その他、自分の死後の諸々の後処理(支払い関係の清算問題や葬儀・供養の問題等)をどうするか、遺言ではカバーできない問題を考えておかなければなりません。このときに選択肢となるのが「死後の事務委任契約」です。何をしてもらうか、委任事項をしっかりと書き出して明確にしておくことが契約のポイントとなります。

 そして、自分の死後、自分の権利・財産をどうするか、相続の問題を考えなければなりません。

自分の財産を承継する法定相続人がいないのですから、何の準備もせずに亡くなると遺された財産の処理を他人に任せることになります。任せると言えば聞こえはいいのですが、悪く言えば事後処理を押し付けるということになります。ここでいう他人とは「国」ということになりますが、「相続財産の清算人」という専門家が裁判所により選出されて事後処理にあたる訳です。

「国」がやってくれるのであればそれでいいや、と投げてしまわずに何とか自分で自分の死後の財産の行方について準備しておきたいものです。

 老後をともに過ごした友人知人や世話になった人など、自分の財産を誰に贈与するかを真剣に考えれば誰かしら思い浮かんでくるのではないでしょうか。そしてその相手とじっくり話をして了解が得られれば、あとは手段の問題です。

 手段とはみなさんご存知の「遺言」です。遺言による贈与ということで「遺贈」というものになりますが、これは公正証書での作成をお勧めします。作成の際には、遺言をスムーズに執行できるように遺言執行者を指定することをお勧めします、遺贈を受ける人(受遺者)が遺言執行者になっても構いません。

 以上、「おひとり様・おふたり様の相続と終活」についてみてきましたが、個人それぞれ考え方も違えば状況も違いますので、準備の仕方も千差万別です。

おひとり様の場合には自分自身を振り返り、おふたり様の場合には自分のみならず配偶者のこともよく考え、少しずつでも準備をしていきたいものです。

自分自身あるいは自分と配偶者の豊かな老後生活のためにも必要なことではないでしょうか。

 

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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