遺産分割における隠れた問題

 相続に関する情報が溢れた昨今ですが、昔も今も変わらず「争族」と揶揄される相続問題の核心は「遺産分割問題」となります。

「遺産分割問題」は、相続人の問題、遺産の問題、被相続人の介護の問題など、様々な要因が絡み合って発生してきます。

その中でも、ある意味目立ち辛いかもしれませんが当然のように存在し、遺産分割に大きな影響を与えてしまう要因があります。

それは「相続人の配偶者」の存在です。

「相続人の配偶者」は相続権はありませんが、相続に大きく関わってくることがあります。

代表的なものが「相続人の親の介護の問題」です。

相続人が直接介護をする場合でも相続人の配偶者の生活環境に影響を与えますし、相続人の配偶者が相続人の親の介護をした場合などは尚更です。

後者の場合は現在「特別寄与者の特別寄与料の請求」として補完的な役割を持つ制度がありますが、前者の場合は相続人の「特別の寄与の問題」にプラスして、相続人の配偶者の「権利の無い主張」が更にややこしくなってしまう可能性もあります。

 もう一つ問題発生の原因となるものが、「相続人の配偶者の口出し」です。

 ただでさえ共同相続人個々の生活状況や様々な事情によって遺産分割協議がまとまり辛いのに、権利を有さない相続人の配偶者が口出しをすると話が複雑化してしまいます。

確かに遺産分割の結果は相続人の配偶者にも影響を与えてしまう可能性もあるので、口出しをしたいのもわからなくもないのですが、ケースによっては「相続人以上に相続人」になってしまい、遺産分割問題を大きくするだけ大きくして、収拾がつかなくなってしまうようなこともあります。

 このような「遺産分割問題」に付随する「相続人の配偶者問題」を予防的に行なった実例を一つご紹介します。

AさんとBさんの兄弟姉妹は、共に結婚はしているものの子供はなく、自分の相続が発生した場合の相続人は「配偶者と兄弟姉妹」という関係になっています。

お二人とも60歳を過ぎていて、親御さんの相続のときに、1軒の貸家を将来的に処分することを前提に共有による相続をしました。

普通はこの共有状態のままどちらかの相続が発生し、配偶者と兄弟姉妹の共有状態となり、あるいは、Aさんの配偶者とBさんの配偶者の共有状態となり、共有問題の小さな火種ができてしまうことになるのかもしれません。

しかし、AさんとBさんの場合は、共有状態のままどちらかが亡くなったときはどうなるのか?という問題意識を持ちました。

そこで行なったのは、処分することを前提の共有状態のまま、どちらかが亡くなったときには、その亡くなった方の配偶者は当該不動産に関しては相続権を放棄し、当該不動産は遺った片方の共有者の100%所有となるような遺産分割を行なうという覚書を作成し、署名捺印を交わしました。

生前の相続放棄は法律的な効果はありません。

しかし、家族・親族間の真剣な話し合いの結果として書面にて署名捺印を行なう行為は、当の家族・親族間では一定の効果があると思います。

 相続人は法律の規定では納得しないものだと、遺産分割協議の現場では言われます。しかし、当人同士の話し合いの証拠には納得するのではないでしょうか。

 相続対策を行なう際、現存する様々な手法ありきで考えてしまう専門家も多数いると思います、その家族・親族にとってどうなのか、既定路線の手法ではなく、オリジナリティあるものが意外と効果があるのかもしれません。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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