寄与分の姉と特別受益の妹の心の問題

 

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姉と妹の心

相続人は姉と妹の2人だけで、被相続人である父親は生前娘2人に対して相続準備は一切していませんでした。相続財産は自宅と預貯金少額です。

相談は姉からでした。姉は父の生前、生活の面倒を看て、自宅の改修費も出して、娘として父の最期の時までしっかりと見届けたとのことでした。それに対して、妹は父から度々援助を受けていたにもかかわらず、父の面倒を看ようともせず、姉に任せっきりだったということらしいです。これで法定相続分通り2分の1なのか、やりきれないというのが姉の心です。

一方、妹に話を聞いてみると、姉の言っていることに若干の誇張があるにせよ、間違いではないということです。しかし、妹からしてみると、父親の面倒を看ている姉、という状況に手伝いに入れないような何かがあったようでもありました。また、幼い頃からの姉妹の関係による妹の立場、言葉では言い表せない何かが妹の心にあるようでした。ただ、法定相続分2分の1に関しては文句はないとのこです。

このように、相続が開始して遺産分割という段階なると、それまでの相続人の関係から生じる「心のわだかまり」がメキメキと現れてくることがあります。

 

寄与分と特別受益

姉の父の面倒を看た行為は特別の寄与に該当するか微妙ですが、自宅の改修費を出しているという点では寄与分と言ってよいでしょう。一方、妹の父からの援助は特別受益と言ってよいでしょう。

一見すると寄与分と特別受益の主張の戦いをするかに見えますが、これをやっても落とし所が見えないし、訴訟に持ち込むのも百害あって一利なしです。

妹は強い主張をしなかったので明確ではありませんが、両者と話しているうちに、姉にも特別受益はありそうでしたので、軽く押さえておきました。

 

着地点

結局、心の問題をどうするかが課題となりました。妹はわだかまりがあるにせよ法定相続分2分の1で文句なしということなので、問題は姉のやりきれないという心の問題です。

訴訟を起こしても大変なだけで嫌な気持ちをもっとすることになり、その時間も多くを要し精神的に大きなダメージを受けることは本人も理解していましたし、争うことなく終わりたいというのも本音でした。

いろいろ話した結果、今までのことはすべてお互い様にして、法定相続分通り2分の1で分割することに納得しました。

 

終わりに

相続では外からは見えない相続人の心の問題というものが存在します。それが表面化するかしないかは個々のケースによって違うと思いますが、今回のケースではまずそこからスタートしたので、慎重な運びとなりました。

最初に発せられた叫びを、ある専門家はすぐに訴訟へと導いてしまうかもしれません、それが叶わないと2人でよく話し合ってくださいと突き放してしまうこともあるでしょう。

相続士としては、このようなケースでも中庸を得た考え方で、落とし所を探っていきたいと思います。

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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