数次相続の場合の遺産分割協議は大変
前回までのコラムで、相続が発生した後、遺産分割協議がまとまり相続手続きが完了する前に相続人が死亡してしまった場合の「数次相続」と、「数次相続」と「代襲相続」の違いについてお伝えしました。
簡単におさらいをしますと、以前のコラムでお伝えした「相次相続控除」は税法上の話で、先の相続の遺産分割協議が終了後10年以内に次の相続が発生した場合に、3つの条件に当てはまれば先に支払った相続税の一部が控除されるというものでした。「数次相続」との違いは相続手続きが完了しているか否か、という点です。
また「代償相続」は、本来相続人であるはずの人が相続発生時に既に亡くなっているため、相続人の地位を亡くなった人の直系卑属(子、子が亡くなっている場合は孫)が代わって相続するということです。それに対して「数次相続」は、相続発生時には生存していたが、相続手続きが完了する前に相続人が亡くなってしまった、という違いがあります。
数次相続については、相続手続きが完了する前に次の相続が発生していますので、複数の遺産分割協議や相続手続きが終わっていない状態となっています。今回は数次相続が起きると相続権や相続分の割合はどのようになるのかをお伝えします。
前回までにお伝えした、数次相続が起きた場合を事例にお話をしますと、一郎さんが亡くなった場合の一次相続の相続人は、花子さん・太郎さん・次郎さん・三郎さんの4人となります。
この相続の遺産分割の協議中に太郎さんが亡くなった場合が数次相続にあたります。
順番としては、一郎さんの遺産分割協議を終わらせた後に、太郎さんの遺産分割協議を進めることになります。
一郎さんの遺産分割協議には、太郎さんの代わりに良子さん・一太郎さん・二太郎さんの3人が相続人として加わり、合計6人で話を進めることになります。
法定相続分は図のとおりとなります。この時点で一太郎さんまたは二太郎さんが未成年の場合、母親である良子さんとは利益相反の関係となりますので、特別代理人の選任申し立てを裁判所に行う必要があります。さらに一太郎さん・二太郎さんがともに未成年の場合には、別々の特別代理人を選任する必要が出てきます。
このように相続人が複数いる場合、遺産分割協議がすんなりまとまるかどうかは財産の内容等にもよりますが、相続人間の関係が希薄な場合や仲があまり良くない場合、住んでいる場所が離れている場合などは、遺産分割の話し合いがなかなか進まないケースがあります。
それでもなんとか話し合いがまとまったとして、今回の事例では一郎さんの相続財産についての遺産分割協議書を作成した後、太郎さんの相続について話し合いを進めることになるのですが、こちらについては次回のコラムでお伝えします。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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