「終活無意味論」に関する考察

先日ネットの記事で、終活は無意味である、という内容のものを見ました。
今回はこの終活無意味論に関して考えてみたいと思います。
某一流大学卒の医師の主張ですが、まずは概要をみていきたいと思います。
老後資金は自分のために使うべきであり、自分が入る立派なお墓を建てることはほとんど意味がない。お墓に使うお金があるのなら、例えば、自分の出身校に寄付をして、ミニ図書館でも作ってもらって、そこに「〇〇記念図書館」と自分の名前を残した方がよっぽど価値がある。
エンディングノートも無意味、おそらくエンディングノートに書かれていることは、それほど遺族の役に立たない。自分が死んでからのことを考えるより、生きているうちに、楽しい思い出を残すべき。
終活といって、死ぬ前にいろいろなことを整理することが流行っているが、意味のある行動とは思えない。唯一、やっておいた方が良い終活があるとすれば、死後、家族に見られたくないもの、恥ずかしいものを処分しておくことぐらい。
遺族のために遺すすという発想から自由になった方が良い。
日本の遺言は効力が弱すぎて(遺留分制度があるため)、指定した者(例えば、子供)だけに全財産を渡すことができない。平等相続は廃止すべき。
子供に財産を遺すのではなく、自分のために使うべき。
お金をいっぱい持っている人がサービスの良い介護付有料老人ホームに入ろうとしても、子供が親の財産が減るのを嫌がり、最低なサービスの介護を受けることになりかねない。
自分で稼いだお金の使い道を、なぜ子供にあれこれ言われなければならない、兄弟姉妹がいれば喧嘩の元になるし、子供にお金を遺して良いことは一つもない。
昔と違い、親が死んだとき子供は60代くらいになっているので、家のローンも終わり、子育ても終わっているのだから、子供にお金の遺してあげる必要はない。
というのが終活無意味論の概要です。
さて、我々相続の専門家である相続士は、相続の準備やそれに伴う終活を推奨し、実行支援をしています。それはもちろんそれらが必要であるという信念のもと行われているのだと思います。
では、終活無意味論の概要で無意味だと主張されているものについて考察していきたいと思います。
老後資金は自分のために使うべきであり、自分が入るための立派なお墓はほとんど意味がないということについてですが、老後資金を自分のために使うのは当たり前であり、そのお金の使い道に関しては、個人の価値観の問題であり自由なことであると思いますから、立派なお墓が無為意味で、寄付をして自分の名前を残すことのほうが価値があるとは一概には言えないと思います。
確かに、お墓に関しては、承継する者の問題や地域の問題などいくつかの問題がありますから、その点をしっかり抑えなければならない事柄だと思います。
エンディングノートが無意味で、書かれていることは遺族の役に立たないということに関してですが、これはどのような内容を記録するかの一言に尽きると思います。遺族が知らないと困るようなことをエンディングノートに記録しておけば役に立つわけですから無意味とは言い切れません。
終活ビジネスが流行り、エンディングノートを謳い文句にしてビジネスを行おうとする者が推奨するようなものは内容が貧素であり、遺族にとって役に立たないものになることはあるかもしれませんが、本当に必要な事柄は何なのか、ということをよく考えてじっくり作成したものは遺族の役に立つものになるのではないでしょうか。
終活といっていろいろなことを整理することは無意味についてですが、実際問題として遺された者は後の整理が大変なので、本人が整理しておいてくれることは大変助かることですし、本人も整理することで自分の人生を振り返ることができ、またその時間というものは、個人差はあるものの、何事にも変えられない時間となる可能性もあります。
日本の遺言は効力が弱すぎるということについてですが、確かに遺留分制度によってある種の制限はありますが、遺留分制度は遺言制度の暴走の歯止めでもありますし、指定した者に全ての財産を遺すことができないからといって効力が弱すぎるとは言えないと思います。
遺言の内容をどのようなものにし、それを補完する為に幾つかの制度を組み合わせていくというやり方もありますので、やり方次第というところだと思います。
子供に財産を遺すのではなく、自分のために使うべきということについてですが、これは一理あり、究極の相続対策の一つが財産を全て使い尽くすというものがあります。しかし、現実的ではなく、子供ためにと思う親の気持ちを否定することはできません。
実際に親のお金と介護問題という厄介な問題が発生し、相続問題となることも多々ありますが、各家族それぞれです、一概には言えません、その都度解決していかなければならないのかもしれません。親の介護問題は避けては通れない問題です。
相続は百人百様というほどそれぞれの問題があります。その解決の一助を担うのが我々相続の専門家です。
今回はネットニュースで目についたものを考察してみましたが、相続の専門家からみればいっている内容が稚拙なものです。
一般の人は相続や終活に関して、分からない・気づかない事ばかりですから、それを踏まえて我々専門家は支援していかなければならないと思います。
それを改めて認識させられた記事であったと思います。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所
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