不動産売却時の譲渡所得と取得費
相続の案件を手がけていると様々なケースに当たります。
例えば、アパート経営などをしている人は当該不動産を売却した場合に生じる譲渡所得については当然の知識として持っています。ですから、譲渡所得を計算する上での取得費がポイントになることなどは言うまでもありません。
しかし、たまたま親が昔住んでいた一軒家を他人に貸していると言うようなケースで、相続人である子供達は一切関知せず、あそこは今貸しているという程度の認識しかないこともあります。
そんな家族に相続が発生して貸している一軒家を子供の一人が相続した場合、将来的に売却となった時、「え!そんなに税金払うの?取得費?なにそれ?購入時の契約書?ん?」
このようなハプニング(?)が起こりうるわけです。
その時になって専門家に相談すると、当たり前のことのように応えられてしまうことも。(これは残念な対応ですね)
概算取得費の方が得であるという場合はいいのですが、そうでないことの方が多いです。
せめて相続手続時に関わった専門家からアドバイスがあればいいのですが、、、。
相続手続に関わった専門家の良くあるパターンは、その時の相続に関してだけ一生懸命であって、その遺産分割がこの後どうなる可能性があるのか、不動産であればどのような効果やリスクがあるのか等をアドバイスしない、あるいは、アドバイスできないということがあります。
今回のケースのような場合は、不動産の関しては素人です、税金に関しても素人です。この不動産を相続により取得した時に、不動産の性質として事業用不動産の扱いになるから売却時には買換え特例の3,000万円控除が使えないこと、譲渡所得がかかること、その計算上取得費が大きな意味を持つことなどを説明しアドバイスしておくことが重要と思われます。具体的な計算までする必要はありませんが、制度として話しておくと良いと思います。
また、取得費が判明せず概算取得費で計算せざるを得ない時に「市街地価格指標」という裏技もどきの方法もありますが、この方法を検討する場合は相続専門の税理士さんに相談するのが得策かと思われます。
策に溺れず・・・です。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所
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