数次相続が発生した場合の遺産分割協議等はどのように進めるのか
相続手続きが完了する前に次の相続が発生した場合の「数次相続」は、複数の遺産分割協議や様々な相続手続きが完了していない状態になっています。では数次相続の時の遺産分割協議や相続手続きはどのように進めればよいのでしょうか。
順を追って遺産分割協議を行う
例えば、夫Aが亡くなった場合の相続人が妻Bと子C・D・Eの4人の場合、夫Aの相続の遺産分割協議中にCが亡くなった場合が数次相続にあたります。
この場合は、夫Aの遺産分割協議が終わった後に、子Cの遺産分割協議を進めます。夫Aの遺産分割協議には、例えば子Cに妻Fと子G・Hがいた場合には、この3人が子Cに代わって相続人として加わり、合計6人で遺産分割協議を進めます。
この時点で子Gまたは子Hが未成年の場合、母親である妻Fとは利益相反の関係となりますので、特別代理人の選任申し立てを裁判所に行う必要があります。さらに子G・Hがともに未成年の場合には、それぞれ別々の特別代理人の選任が必要です。
このように、本来よりも相続人が増えるケースが多くなり、相続人間の関係性が希薄な場合等には、遺産分割協議が長引いてしまうことも考えられます。なお夫Aの相続の分割協議がまとまった場合、遺産分割協議書には以下のようにそれぞれの地位を記載します。
夫A:被相続人
妻Bと子D・E:相続人
子C:相続人兼被相続人
妻Fと子G・H:相続人兼被相続人子Cの相続人
夫Aの遺産分割協議が終了し相続手続きが完了した後に、子Cの相続について、妻Fと子G・Hの3人で話し合いを持つことになります。夫Aの遺産分割協議の結果、相続した財産があれば、その財産と子C固有の財産をあわせて分割協議を行います。
今回の例は2つの相続手続きが完了していないケースですが、中にはもっと多くの相続手続きが完了していないまま現在に至っているケースも考えられます。
不動産登記の進め方は?
複数の相続の遺産分割が終わらないままになっていると、現金の分割だけでも相当な時間と労力がかかりそうですが、不動産が絡むと話はさらに複雑になります。誰が相続するかという話はもちろん、はじめの相続から最後の相続まで、順を追っての登記が必要です。
ただし、数次相続で不動産を相続した場合、本来なら複数の登記が必要なところを、1回の登記で済むケースもあります。例えば今回の例では、夫Aの相続財産である土地甲を子C・Dで1/2ずつ相続したとします。その後、子Cが相続した土地甲の1/2を妻Fが相続した場合には、妻Fが取得した土地については、「夫A→子C→妻F」という順番で、2回の登記が必要です。
それに対して、土地甲を子Cが単独で相続した場合には、「夫A→子C→妻F」のうち「子C」部分を省略して「夫A→妻F」と、1回の登記で済みます。
このように不動産で複数回の相続が行われたとしても、最初の相続と、最初と最後の間の相続である「中間の相続」が「単独」で行われた場合には、最初の被相続人から最終の相続人に直接所有権の移転ができることになります。
なお、単独で相続をする理由が遺産分割協議によるものか、他の相続人の相続放棄によるものなのか等、理由は問いません。また、最後の登記については単独である必要はなく、今回の例では土地甲を妻F・子G・子Hの共有名義にすることも可能です。
数次相続は期せずして起こる場合もありますが、通常の相続よりも色々な負担が大きくなることが考えられます。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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