配偶者の相続権に関する一考察

被相続人の配偶者は常に相続人となり、血族相続人があるときはその者と同順位とする、と法定相続人としての確固たる地位を配偶者は持っています。被相続人の血族相続人には順位があり上位の者があるときは下位の者は相続権を有さないのに対して、配偶者は常に相続人となるというある意味強い立場にいるわけです。更に、相続分算定の基準となる法定相続分についても、同順位となる血族相続人に応じて2分の1、3分の2、4分の3と優位な立場となります。

現在の相続法において配偶者は絶対的に有利な立場にあります、そこに配偶者居住権が加わることで更に配偶者の立場は強固なものになるのではないでしょうか。

被相続人と配偶者は長年の婚姻生活で財産をともに築いてきたわけですから、ある意味半分は配偶者のものと言っても良いのかもしれません。そういう意味でも法定相続分2分の1というのは妥当なのかもしれませんが、この2分の1という法定相続分になったのも昭和55年の改正によるものでそれ以前は子と共に相続する場合の配偶者の法定相続分は3分の1と今より少ない割合でした。

しかし、昭和55年の改正に続き今回の改正でも配偶者を保護する方策が採られ、相続開始後、遺された配偶者の生活が守られやすくなりました。

相続の問題点として今まではあまりクローズアップされてきませんでしたが、遺された配偶者の生活基盤をどのように確保するかということが相続の現場では課題となっていました。配偶者と複数人の子が相続人の場合で、子同士で遺産分割に関して揉めてしまったときなどは、とかく配偶者の相続分に関してはおざなりになり、配偶者が子供達のためだと我慢せざるを得ず、その後の配偶者の生活にも影響していく、ということも起こりがちでした。

被相続人と共に、支え、協力して築いてきた財産であるにも関わらず、相続開始後に遺された配偶者が相続を原因として大変な思いをするのは忍びない事です。

そいった状況を鑑みて配偶者を守るという方策が多く採られるようになってきたのかもしれません。

長年連れ添った夫婦の場合であれば当然のことだと思います、だから、その財産の中にたとえ親族法で謳われている特定財産(夫婦の一方が単独で有する財産のことで、婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産をいう)があっても特に区別することなく遺産として扱われるのです。

相続の場合に特定財産として挙げるとすれば、被相続人の直系尊属の相続によって被相続人個人の権利として承継した財産(例えば先祖から承継している不動産等)などがあるでしょう。

長年の婚姻生活の中では、両方の親の介護等もあり、義理の親であろうと自分の親と同じように介護等の面倒を看る生活というものを乗り越えてきた夫婦の歴史がありますから、たとえ先に挙げたような特定財産であろうとは配偶者は承継する権利があるのだと思います。

最後に配偶者の相続権に関する問題点を挙げておきたいと思います。

現在多くなりつつある事実上の婚姻(いわゆる事実婚)について、長年の事実婚期間があった後に

婚姻(いわゆる法律婚)し、数年で相続開始となった場合の配偶者の相続権をどうみるかということです。

つまり、婚姻届を出してたった数年(短ければ1年未満ということもあり得ます)で配偶者という立場で相続権と相続分を主張するのはどうかということです。

他の相続人が認める状況もあると思います。事実婚でありながらも親の面倒をよく看てくれた、親族との付き合いもしっかりしてくれて〇〇家の者として過ごして来てくれた、ただ法律上の籍を入れていないだけ、なんてケースの場合は入籍後たった数年の場合でも他の相続人は認めてくれる可能性が高いのではないでしょうか。

しかし、その逆だった場合は多くの問題が発生し得ますし、特に先祖から承継した特定財産があるときなどは他の相続人から猛反発を食らうこともあり、争いに発展する可能性も高くなります。

遺産分割協議の場に「ほくそ笑む相続人(別コラム『笑う相続人とほくそ笑む相続人』でお話ししています)」が現れては纏まるものも纏まらなくなります。

配偶者の相続権、守らなければいけないものですが、利用されては困るものでもあります。

どちらにしても状況に応じての対応策(事前準備)が必要になってくるのではないでしょうか。

そして相続法改正によって新たに創設された「配偶者居住権」、今後どのように相続の現場で活きていくのか、はたまた、どのような問題を噴出させるのか、相続の専門家は画期的な規定ができたと手放しで喜ぶのではなく、冷静に活用方法を押さえていかなければならないでしょう。

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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