認知症になったときの準備をしておくメリットは?

認知症、何とも怖い響きでしょうか。高齢になり脳の活動が鈍くなることで認知症への道が見え隠れして、ある意味恐怖心とも言えるものがあるのではないでしょうか。若年性のものは今回は省いてお話しさせて頂きますのでご了承ください。

世間一般では「相続」というテーマで、自分が亡くなった後、自分の財産をどうするかという視点で、また、争族予防という視点で「遺言作成」について取り上げられることが多くあります。自分が亡くなった後のことを元気なうちに準備しておきましょう、遺される家族のために、というのが遺言作成を促す文句となりがちです。確かに、遺される家族が争わないために遺言を作成しておくというのは大変意味のあることですが、遺言は遺言者が亡くなってから効力を発生させるものです。

では、生前の認知症などのリスクに備えるためにはどうしたらいいのでしょうか。

最近は「終活」という言葉が広まっていますが、この「終活」を広めている専門家の多くは「エンディングノートの活用」、「葬儀やお墓の準備」そして「相続の準備としての遺言作成」という3つの大きな括りにだけスポットライトを当ててしまう傾向にあるようです。

「エンデイングノートの」の中で『自分の判断能力が無くなったとき』というような表現で「認知症」になったときに「どうしたいか」という「希望や考え」を書かせたりすることはあるかもしれませんが、具体的なリスクヘッジにはなっていません。

「認知症」になったらどうするか、元気なうちに対策を取っておかなければ大変なことになるかもしれない、家族が大変な思いをするかもしれない、と思っていても誰に相談すれば良いのか、そもそも対策というほどの方法はあるのだろうか、と思案しながら時間が経ってしまうということがほとんどではないでしょうか。

現在、「認知症」になってしまったときに、事後対処としての「後見制度」の利用というのがほとんどです。「認知症」になってしまった本人の家族が困って、法律の専門家に相談して家庭裁判所での手続きを経て「後見人」を立てるというパターンでしょう。

この事後対処という方法が悪いわけではありませんが、事前に準備をしておくという方が様々な面でメリットがあると思います。

事前準備しておくことで、認知症になった後のことを本人と後見人になる人と、そしてケースによっては家族や専門家と色々な話をしながら、考えや方向性を共通のものにしていくことが可能となりますので、後見人の役割がスタートしたときにスムーズにトラブルなく後見事務を進めていける可能性が高まります。

制度で言いますと、「任意後見制度」を利用することになりますので本人の後見人となる人を本人が自分自身で選んでおくことができます。普段から接している家族や友人知人、各分野の専門家などが対象となり得ますが、普段から接しているため本人の希望を理解しやすく、家族構成や生活環境などもよく知っている可能性も高いのでより良い後見事務を行える可能性があります。本人の家族が後見人となる場合には、本人や家族と話し合って予め専門家に相談やサポート依頼をしておくことも可能となります。

このように事前の準備をしておけば、色々なことを考えて幅広く構えておくことも可能となりますので、事後対処に比べてメリットが多いと言えるでしょう。

本人のみならず家族もよく考えて事前の準備を検討することをお勧めします。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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