空き家問題と相続 その3

■不動産は遺産分割協議が完了しないと相続人全員の共有財産となる

「空家等対策の推進に関する特別措置法」における「特定空室等」に該当した場合には、自治体が住宅への立入調査をして、改修・修繕・撤去などの指導が行われます。それに従わない場合には、勧告→命令→代執行(強制撤去)の措置がとられます。

勧告を受けた場合には、「固定資産税等の住宅用地特例(200平米までの住宅用地は課税標準を1/6に減額)」の対象から除外され、土地の評価額は更地の場合と同様となり固定資産税の負担が増えてしまいます。さらに強制撤去が行われた場合には、解体費用等を自治体から請求されてしまうことになります。

この「特定空室等」の中には、相続発生後に誰も住むことのない「住まない実家」も含まれています。「住まない実家」が「特定空室等」になってしまう原因は、大きく次の2つが考えられるのではないでしょうか。

 

1.相続人が適正に実家を管理できていない

2.遺産分割協議が終わっていない

 

1については、相続人の自宅と相続した実家との距離が離れていて、頻繁に足を運ぶことができずに放置されている、等の理由があると思います。

2については、遺産分割の話し合いが進んでいないということは、相続人の間でコミュニケーションが取れていないということですので、当然自宅は放置されたままになってしまいます。遺産分割協議が終わっていない不動産は被相続人名義のままですが、このような不動産は相続人全員の共有の財産となります。固定資産税が滞納されているケースもありますが、相続人全員が連帯して納税する義務を負っています。

被相続人の戸籍をたどれば相続人が判明しますので、まずは相続人のいずれかに「代表相続人選定届」の提出が求められ、相続人の代表者に「固定資産税の納税通知書」が送付されます(代表相続人選定届が提出されない場合、自治体が相続人の中からいずれかを代表者に指定します)。納税されない状態が続くと、自治体によっては不動産の差し押さえをするところもあり、せっかくの財産を手放すことにもなりかねません。代執行による解体費用については、「市町村長は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する」となっていますので、固定資産税と同様に相続人全員が連帯して支払う義務を負うことになると思います(支払の請求や財産の差し押さえ通知等は代表者にところに来るのが一般的です)。

このように「特定空家等」にならなくても、空き家にしておくことで様々なデメリットが生じてしまいます。「住まない実家」を相続した場合、あるいは相続することになる場合には、不動産の専門家等に物件を見てもらうことで「リフォーム等をして賃貸に出す」「売りに出す」「更地で駐車場等として活用する」「建物を新築して活用する」など、今後どのような活用方法が可能かを検討する必要があります。いずれにしても物件や地域等の条件によってできる対策は変わってきます。

せっかく先代から引き継いだ貴重な財産ですので、空き家についても、より有効に活用する方法をアドバイスすることが相続士には求められてきます。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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