相続登記と空き家

昨今問題となっている「空き家」ですが、原因の一つに相続があります。

<ケース1  魅力がない遺産としての家>

空き家も元々は人が住んで、家族団欒の場であった時代があったはずです。しかし、時代とともに親と住んでいた子供達は巣立って、地方の者は都会へ出て行き、都会の者も親元を離れ自分の生活を始め、家族団欒の場であった家は年老いた夫婦だけが残ってしまいます。

そんな中相続が開始し、子供たちにとっては自分が育ってきた家が遺産として急浮上してくるわけです。親元を離れ自分の生活を始めた子供達はすでに持ち家が有る者もいたりして、遺産となった家に愛着はあるものの固執はしないという状況で、その遺産となった家は誰が承継するのかという問題が新たに浮上してきます。

一次相続の時はまだ片親がいますので、親の生活の場として残すことも考えられますが、二次相続の時に完全に主人を失った家をどうするかが問題になります。

愛着はあるものの固執しない家、現在住んでいる場所と離れてしまっている場合にはなかなか手をつけられないのも現実です。

所有者がいても空き家状態が続いてしまうという問題、愛着のある家だけに、固執する家にしておけば良かったという後悔もあるかもしれません。親が元気なうちに、あるいは一次相続の時に不動産の組み換え等の対策をとっておいたら違ったのかもしれません。

 

<ケース2  遺産分割協議の問題>

相続の最大の山場となるのが遺産分割協議となります。誰が何を取得することができるか、目の色を変えて臨んでくる相続人も少なくありません。

特に遺産の中に不動産がある場合には、切り分けることができないものですから、誰が承継するかが焦点となります。代償分割や換価分割などの方法もありますが、よくあるのが「共有」という選択です。

みんなで共有にするのが一番公平だという間違えた認識から不動産を共有にしてしまうケースがありますが、共有にした場合にその後に起こりうる問題に気づいていないことがほとんどです。

最悪の場合、大人数の共有者となり、ほとんど会ったこともない人同士が名を連ねるということにもなりかねません。そうなると、その家は誰も手をつけることができず空き家のまま放置されてしまうことになります。

遺産分割協議の際に、共有という選択をしていなかったら、最初の相続人の間できっちり問題解決しておけば、こんなことにはならなかったかもしれません。

 

<ケース3 移転登記の問題>

相続が開始しても不動産の移転登記を行わない人たちもいます。相続税計算が基礎控除内で済んでしまい税務申告する必要がないような人は、税理士等の専門家に依頼することもないので、不動産があっても放ったらかしということがあります。

不動産の名義変更をしなくても何の問題もなく生活できてしまいますから、必要性を感じないようです。固定資産税は役所の方で宛名を変えて請求してきますが、登記名義のことまでは触れて来ないようです。

また、被相続人の名前をもうしばらく残しておきたいと甘藷に吹ける人もいるようです。

このように不動産の名義変更をしない状態がずっと続いてしまうと、その不動産の所有者が分かりづらくなってしまうだけでなく、遺産としての認識が薄くなってしまい、だんだんと対処する相続人もいなくなり、誰の持ち物なのか分からなくなってしまうこともあります。

この問題は、相続人側の問題だけでなく、不動産を承継する人が移転登記をする際に、手続きが分かりづらい、大変だ、という行政側の問題もあります。

また、登記専門の法律家がいますが、一般の人が接点を持つにはなかなか難しい問題もあります。

今年5月に、空き家問題解決のための行政側の施策の一つとして法務省が開始した「法定相続情報証明制度」がありますが、これを有効に活用していくことで不動産のみならず、その他の相続手続きが少しでも楽になることを望みます。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

相続士資格試験・資格認定講習のお知らせ

日本相続士協会が開催する各資格試験に合格された後に、日本相続士協会の認定会員として登録することで相続士資格者として認定されます。また、相続士上級資格は上 級資格認定講習の修了にて認定されます。